急速な資金シフト、債券から株へ、新興国から先進国へ

 2011年に入って以降、大規模な資金シフト、投資家のポートフォリオの組み替えが起きている。

 新興国株売り、米国株式ファンドへの資金流入と債券売り、金価格の下落、等である。昨年秋口までの、世界デフレシナリオの下で債券が買われ続けた局面からの大転換である。

 その背景に世界経済のリスク観の二極化がある。

 新興国でのリスクテイクが過多となる一方、先進国ではリスク回避過剰というコントラストが鮮明である。特に中国ではインフレ加速とバブルの増大により、経済拡大の持続性が不安視され始めた。大半の新興国では景気の過熱とインフレ、資産バブルなどによって金融が引き締められるなど、成長隘路が顕在化している。

 他方先進国、中でも中核の米独日は企業部門の調整、家計の貯蓄上昇、資産価格下落など、経済調整が万端であることに加えて、需要と雇用の停滞から金融は超緩和の状態にある。

 米国の新金融緩和QE2は新興国への資金流入・新興国の通貨高→新興国の引き締め、という形で新興国の経済運営を困難にしている。

 2011年は調整万端の先進国、特に米独日に再び脚光があたり、先進国の株高・資産高が新規需要に結び付いていくだろう。

図表1 主要国の株価指数(2010年9月1日=100)
出所:ブルームバーグ、武者リサーチ