各運送業者が乗務前点呼や安全指導によって予防保全に努めるも、トラックの交通事故は後を絶たない。ドライバーの高齢化や人手不足などの背景もあり、重大な社会問題になっている。AIやIoTなど、テクノロジーでこの現状を打破し、「事故ゼロ社会」を実現する取り組みが始まっている。
事故ゼロを目指し予防保全から予知保全へ
「ITが浸透しAIが進化を遂げてきたことで、ようやくわれわれが目指す『事故ゼロ社会』の実現が近づいてきました」と語るのは、物流業界大手の日立物流 経営戦略本部長の佐藤清輝氏だ。同社のオープンイノベーションによる協創プロジェクトを指揮する人物である。
日立物流 執行役常務 経営戦略本部長 佐藤清輝 氏
同社は2019年4月に「スマート安全運行管理システム(SSCV:Smart & Safety Connected Vehicle)」を外販する。交通事故の予防保全は今、AIとテクノロジーによって予知保全へと姿を変えようとしている。
「SSCV」は、疲労科学に着目し、事故リスク低減を目指す安全運行支援技術である。運行するトラックに、ドライバーの生体情報、自律神経、脳波、目の瞳孔、車の挙動などのセンシング機器を設置し、そこから吸い上げたデータをAIが分析し、危険運転の予兆(疲労、眠気、注意散漫など)が出た段階でリアルタイムにドライバーや運行管理者にアラートを発し、事故を未然に防ぐ仕組みだ。