ドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)は11月6日の中間選挙を前に、誇張を含めたレトリックを使って日本や中国を攻め続けている。
米国から見た対日、対中の貿易赤字額は2017年、それぞれ約7兆5000億円と約41兆円と確かに大きく、トランプは数字を挙げることで客観性を持たせようとしている。
だが、全体を眺めるとその主張には正確さに欠ける点が少なくない。ここでは違う視点から数字を挙げて、レトリックを覆してみたい。
ブッシュ時代の方が大きい貿易赤字額
米商務省の統計を見ると、昨年の輸入額は史上最高を記録しているが、貿易赤字額は過去最高ではない。
2004年から2008年にかけての5年間(ブッシュ政権時代)の方が貿易赤字額は大きい。現在より1000億ドル(約11兆円)近くも大きい。
米国は世界最大の市場であることから、輸出よりも物品の輸入が増える傾向にあるのは事実だ。
それだからといって、トランプが繰り返し述べている「米製造業の衰退」につながったと考えるのは早計である。
実は米製造業の生産高は、米労働省労働統計局のグラフを見ても過去25年、右肩上がりで推移している。