チュニジアの独裁政権を倒した「ジャスミン革命」は、ヨルダンとエジプトに飛び火した。今後、アラブ世界はどうなるのか、また、アラブ世界の動揺によって原油価格が1バレル当たり200ドルまで高騰し、産油国ロシアにとって「黄金のシャワー」になるのではないか──。様々な憶測がロシアで飛び交っている。
革命色の強い市民運動が、ロシア国民にどのような影響を与えるのか、という点も大きな注目を集めている。
ロシアでは国民の政権に対する不満が高まりつつある。2010年12月11日に、モスクワ中心の広場で民族主義の若者が暴動を起こした。民族間の対立がきっかけと報じられたが、実際は現政権に対する不満が主な原因だった。
一連の悲劇でますます高まる政権への批判
2010年11月25日、ロシア南部クラスノダール地方の農村で、1歳の子供を含む家族やその友人ら12人が相次ぎ刺殺されるという集団殺人事件が発生した。マスコミでは「農地の売買を巡る殺人事件であり、背景には、警察や農業関係の企業と、犯行グループの癒着があった」と報じられている。
また、2011年1月24日にはモスクワ・ドモジェドヴォ空港で自爆テロ事件が発生し、35人が死亡した。こうした悲劇が起きるたびに、現政権に対する批判はますます強まっている。
2000年に権力を握ったプーチン政権は、民主主義を目指して社会を混乱させたエリツィン政権を反面教師とし、秩序と法治制の回復を目標に掲げた。
だが、ロシア社会はそれを実現できていない。そのことに対する不満と怒りがロシア国民の間に広がっている。2011年、内務省の予算は4000億ルーブル(前年度予算比率4%増)が見込まれているが、治安の回復はほど遠い状態にある。
何よりも、ロシアはテロを抑え込めていない。その理由をマスコミは次のように見ている。「ロシアでは民主的に権力者が交代する仕組みがない。まるでアラブ世界のようである。そのため汚職や癒着が蔓延し、国内の安全・治安体制が確保されない」
石油と天然ガス頼みの経済構造
1月26日に発表された世論調査の結果によると、メドベージェフとプーチンの支持率は下降気味だが、それでも2人とも支持率はまだ60%を上回っている。次期大統領には2人のうちのどちらかがなることが、ほぼ確実視されている。
しかし、政権の将来は明るいとは言えない。プーチンが政権を獲得してから国民の生活水準は上がったが、石油・天然ガスの輸出に大きく依存する経済構造になっており、長期的な成長は望めない。