モスクワ・ドモジェドヴォ空港爆発事件
1月24日、ロシアの空の玄関口であるモスクワ・ドモジェドヴォ空港において、死者35人、負傷者170人を出す爆発事件が起きた。ロシア捜査委員会によれば、この犯行を実行したのは北カフカス出身の20歳男性とのことである。
不安定要因としての北カフカス武装勢力
北カフカスの武装勢力はこれまでにも、2010年3月に起きたモスクワ地下鉄での自爆テロ事件(約40人死亡)など、一般人を対象としたテロを多数にわたり起こしてきたと言われており、ロシアの不安定要因となり続けてきている。
では、なぜ北カフカスの武装勢力は、一般人を対象とした大規模なテロを実行するのであろうか?
「黒い未亡人」
相次ぐテロの要因としては、これまで様々な点が指摘されている。例えば、夫をロシア軍に殺害された女性(「黒い未亡人」と呼ばれる)が復讐心から自爆テロを敢行するケースもある(2010年3月のモスクワ地下鉄での自爆テロの実行犯は「黒い未亡人」と言われている)。
また、カフカス出身者がロシア人によって長年にわたり差別の対象となってきたことに対する根強い反発も指摘されている。
ちなみに、カフカス出身者はロシア人と外見で容易に区別することができ、ロシア民族至上主義を掲げるスキンヘッド集団による暴行の対象になることも多い。
空港テロの背景にあるもの
このように、北カフカス住民が武装勢力に加わってモスクワなどでテロを敢行する要因は多いのだが、その社会・経済的要因のうち最も重要と考えられるのが、北カフカスに蔓延する「失業」「貧困」によって若年層が将来に絶望し、武装勢力に加わって自爆テロ等に走るというものである。
そこで本稿では、北カフカスを巡る失業や貧困について、経済統計データや世論調査の結果によって描写してみたい。