だが、そもそも日本に、この種の兵員輸送用の装甲車が「大量」に必要なのだろうか。

 ここで、日本が置かれた戦略・作戦環境を考えてみよう。まずは海外派遣の場合だが、こうした任務では、現地のゲリラ勢力からの攻撃を考えれば装甲の分厚い兵員輸送車両は確かに必須に思える。特に路肩爆弾やドローン対策は必須だろう。しかし、そもそも南スーダンPKOの日報問題のトラウマ後も、陸上自衛隊が大規模に海外に展開することがあるのだろうか。PKFの本体業務のような武器使用を実施する任務を行うことはあるのだろうか。少なくとも近い将来にはないし、そのような戦闘状況に自衛隊を多数送ることは考えにくい。であれば、路肩爆弾対策に特化したオーストラリア製ブッシュマスターを引き続き運用・調達するか、もしくは米軍が大量に保有しているMRAPの中古を少数調達すればよい。

 では、日本への攻撃、いわゆる武力攻撃事態時はどうか。その場合も出番はない。中国と日本もしくは日米が開戦ともなれば、石垣・宮古島は海峡突破のために攻勢を受けるだろうし、本土の有力な自衛隊の拠点は弾道・巡航ミサイルやサイバーによる攻撃のみならず特殊部隊によるゲリコマの攻撃を受けるだろう。しかし、冷戦時代のように敵の機甲部隊が本土に上陸する蓋然性は低い。そうであれば、歩兵部隊を砲火の下でも機甲部隊に追随させるための兵員輸送用の装甲車は不要であろう。本土での兵員輸送は、トラックや高機動車だけで十分である。また、米軍がストライカー旅団構想で前提としたような、“重装甲部隊と軽歩兵の中間的な存在”を機動的に派遣する必要もない。

 石垣や宮古などの離島ではどうか。これらの地域では動き回る地形の余裕もないので、あまりに役に立たず、兵員輸送用の装甲車など無用の長物でしかないだろう。敵戦力の上陸後の逆襲で使用するというのもナンセンスだ。