「タイのスイス」と言われるドイトン(筆者撮影、以下同)

 7月というのに猛暑日が続いている。ここまで暑いのは異常としかいいようがない。まるで赤道直下のシンガポールか、緯度はもう少し上になるがバンコクにいるような気分だ。

 バンコクやシンガポールに限らず東南アジアの大都市では、オフィスビルはエアコン完備しているので室内は寒いくらいに冷えているのだが、一歩外に出ると非常に蒸し暑い。ただし、雨期にはスコールともいうべき激しい雨が降るので、雨が降った後は空気がひんやりして爽快である。タイが最も暑いのは、雨期に入る前の3月だ。

 エアコンがなかった時代には、たとえばインドやマラヤ(現在のマレーシア)、セイロン(現在のスリランカ)など英国の植民地であれば、支配層の英国人が滞在するために高地に避暑地が開発された。オランダの植民地であった東インド(現在のインドネシア)も同様である。日本の軽井沢もまた、夏の酷暑を避けるために西洋人が開発した。

 そういった避暑地で夏を過ごすことができるのは、もちろん当時は外国人や富裕層に限られていたわけだが、大衆化された現在では一般人も利用できるようになっている。とはいえ、エアコンが普及するようになってからは、わざわざ避暑地に出かける必要もなくなっているのかもしれない。

 タイにも避暑地がある。タイは植民地化を免れたので、避暑地は王室関係の離宮や別荘として開発された。今回は、タイ北部の地方都市チェンライの北にある風光明媚な山岳地帯ドイトン(Doi Tung)と、そこで栽培されているタイのコーヒーを中心に、タイ北部の国境地帯について見ていきたいと思う。

印の付いた地域がドイトン。そのすぐ南がチェンライ。(Googleマップ)
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