・常用労働者でないことによる派遣労働者の雇用の不安定性を解消しきれていない
・終身雇用・長期雇用を前提とした日本型の雇用慣行に重大な影響を及ぼす
・制度導入業務制限が拡大してしまう可能性がある
・雇用者と使用者の責任の不明確性、命令実効性の不担保、賃金定義の曖昧
・社会保険の適用が進まない、年休取得できない等の条件的不利益の恐れ
・セーフティネット(労働者不利益救済規定=企業に対する処罰規定含む)の不十分性
・労働者派遣事業と労働者供給事業と請負との認定基準明確化の必要性、などなど。

 とはいえ、「派遣労働者の保護と雇用の安定」という崇高な理念により、法は安定的に機能するはずであった。しかし、そんな期待はすぐに裏切られた。

 本来は雇用の弾力化と労働市場の流動化の推進によって労働力需給のミスマッチが解消され、労働者と経営者が共にwin-winとなるはずだった。しかし実際は、その後の度重なる法改正の影響も大きく、結果として派遣という名の非正規労働者を増大させ、最低条件ライン近辺での雇用が増大するという、新規労働者側の一人負けとなる結果となった。特に若年労働者市場では、日本型労働慣行がもたらす雇用の安定性とは真逆の、非正規雇用という著しく不安定で無権利な働き方(働かせ方)の比率が増大かつ常態化するようになってしまった。

 中でも、追従的法改正における適用業務拡大の影響が大きかった。すなわち派遣可能な業務範囲がどんどん拡大されてしまったため、本来終身雇用・長期雇用を前提とした正社員として雇用されるべき人物、安定的な職に就きたいと考えていた人物が、希望する形態で就職できなくなってしまったのだ。

 下記グラフは労働者総数におけるパートタイム比率を示したものである。

全産業事業所(5人以上規模)の労働者総数とパートタイム比率
(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」より筆者作成)