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話せる「スマート」ラブドール、中国人男性の孤独感を埋められるか?

話せる「スマート」ラブドール、中国人男性の孤独感を埋められるか? 中国・大連にあるEXDOLL社の工場で、ラブドールの開発にあたる技術者(2018年2月1日撮影)。(c)AFP/FRED DUFOUR〔AFPBB News

(文:大西睦子)

 中国国家統計局によると、中国では、2016年に男性の数が女性の数より3359万人も上回りました。この差は、カナダの人口に匹敵する数です。

不均衡な男女比をもたらした3つの要因

 中国がこのような状況に陥った原因としては、男児を好む文化、1979年から2015年まで続いた「1人っ子政策」、そして1980年代に導入された超音波技術による選択的中絶、が考えられています。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)グローバルヘルス研究所のテレーズ・ヘスケス教授らは、『カナダ医師会雑誌(CMAJ)』の報告(2011年)で、中国で「失われた女性」の圧倒的多数が、選択的中絶によるという明らかな証拠がある、と指摘しています。

 中国では伝統的に、社会的な地位の向上や家系維持のために、結婚は当然のことと考えられています。しかし『CMAJ』の報告によると、今後20年間、若い男性の10~20%過剰な状態が続き、余った男性はおそらく結婚できない、といいます。現在でも中国では、28~49歳の未婚者の94%が男性であり、そのうち97%は高校を卒業していません。結婚することができない男性は、「独身の犬」、「裸の枝」、「売れ残り男」と呼ばれています。

売れ残り男の退屈で孤独な人生

『ワシントン・ポスト』の「多すぎる男たち」という記事(2018年4月18日)で、広東省東莞(とうかん)市在住のリー・ワイビンさん(30歳)が取り上げられています。

 ワイビンさんが育ったのは山村で、そこでは男子の数が女子の数を上回っており、ワイビンさんにはこれまで一度もガールフレンドがいたことがない、といいます。

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