というのも、米中による一連の動きが米国の農業従事者を慌てさせたからだ。

 特に中国が大豆を持ち出してきたことが大きい。米国はいまでも世界最大の大豆生産国であり、一方の中国は世界最大の大豆輸入国である。総生産量の約6割を中国が買い占めている。

 両国は大豆という農業品だけからも、極めて相互依存度が高いことが分かる。中国が本当に米国産大豆に25%の関税をかけると、中国市場での米国産大豆の価格が上昇する。

米国の農家にはダブルパンチ

 中国は米国産を敬遠し始め、代わりに市場シェアが増えているブラジル、アルゼンチンの大豆を買うようになる。最終的に困るのは米国の農家で、TPPからも離脱となると、生産者はダブルパンチを食らうことになる。

 アイオワ州の上院議員、チャック・グラスリー(共和党)は、「農業従事者たちは中国からの制裁にかなり神経質になっています。事態を打開するためにトランプ大統領に陳情します」とツイッターで心境を吐露している。

 今年11月の中間選挙では共和党が議席を失うと予想されているだけに、トランプとしても、共和党の議席が失われることに歯止めをかけたい。TPP復帰は共和党関係者にとって、光が射すような思いがあるのだ。

 2つ目の理由として、トランプ自身がもともと自由貿易主義者だったことが挙げられる。

 2016年大統領選で筆者がトランプを取材中、幾度となく「私は自由貿易主義者です」と発言したのを聞いた。トランプが書いた書籍にも自由貿易の重要性が述べられている。

 そのため、選挙中からTPP離脱を口にいたトランプだが、いずれは復帰してくる可能性が高いと踏んでいた。しかも元々、自由貿易を貿易政策の基調にしてきたのは民主党ではなく共和党である。