交通事業者のデジタル技術の活用方法は、地方と都市部で異なる(写真はイメージ)

 鉄道や路線バスをはじめとした公共交通サービスは、ビジネスモデルのあり方が大きな転換を迫られている。転換の背景にあるのは「デジタル化」という要因である。

 ただし、デジタル化の方向性は地方と都市部で大きく異なる。

 地方では、公共交通そのものが存続の危機にある。経営状態の悪化(路線バス事業の約8割以上が赤字)だけでなく、この数年で運転手の不足による廃線が増加している。路線廃止に伴い、地域住民のモビリティ維持・確保のためにデマンドバス等の交通手段を検討する自治体もあるが、人口減と自治体の税収減、担い手不足という根本課題を解決するものではない。地方の交通サービスは、費用効率の向上、新たな収入源確保、そして公共交通の存続・維持のために、デジタル活用の道を模索していく必要がある。

 一方、都市部の人口はすでに日本全体の約56.3%に及んでいるが、さらなる人口集中と過密化が加速している。都市のインフラは限界に達し始めており、モビリティ(ヒトやモノの移動)が引き起こす渋滞悪化・大気汚染の進展といった社会問題が拡大している。都市化によるこうした社会問題の解決と、複数の交通モードの連携やパーソナルな情報提供に基づいた“ドアからドアへのスムーズな交通”の実現が、都市部では求められることになるだろう。

「自動運転技術」「ライドシェア」で交通サービスは激変

 交通サービスを劇的に変えるデジタルイノベーションの代表的事例が、「自動運転技術」と「ライドシェア」である。

 既存の公共交通、とくに自動車による運送は、乗務員の人件費が総コストの6~7割を占める固定費ビジネスである。自動運転の実現は、第1に、この構造を大きく変える。自動運転技術が公共交通に導入されれば、人力への依存が緩和される(注1)。 これにより、運転手不足の解消、労務管理からの開放、人件費の削減、それに伴う収支の改善が期待される。