総務省が1月30日に発表した12月の全国消費者物価指数で、生鮮食品を除く総合(CPIコア)は前年同月比+0.2%。プラス幅は前月から0.8ポイント縮小した。品目別に見ると、「外国パック旅行」がコア前年同月比を押し上げる方向にわずかに寄与したものの、「ガソリン」「灯油」「生鮮食品を除く食料」「プロパンガス」などが押し下げ方向に寄与した。「原油バブル」崩壊を主因に、全国CPIコアは非常に速いペースで前年同月比プラス幅を縮小してきており、早くもゼロ%に近づいた。都区部CPIコアの内容から予測すると、5月まで待たず、次回2月分でマイナスに転落する可能性が高い(後述)。

 この間、12月の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合(いわゆる欧米型CPIコア)は前年同月比 0.0%。季節調整済指数は99.3(前月比 0.0%)。低位安定を継続しており、今後はこの物価のベースライン部分が下がってくるかどうかが、デフレ圧力の強まり具合を見ていく上での注目点となる。

 

 

 

 

 1月の東京都区部消費者物価指数(中旬速報)は、生鮮食品を除く総合(CPIコア)が前年同月比+0.5%。プラス幅は前月から0.3ポイント縮小した。品目別に見ると、値上げがあった「電気代」「都市ガス代」が予想通り押し上げに寄与する一方、「被服及び履物」「生鮮食品を除く食料」「宿泊料」「外国パック旅行」「ガソリン」「家賃」「教養娯楽用耐久財」など数多い品目が押し下げに寄与したことが分かる(次ページ表ご参照)。また、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合(いわゆる欧米型CPIコア)は前年同月比▲0.3%で、前月から0.5ポイント低くなった。季節調整済指数は99.5(前月比▲0.3%)である。

 上記の結果から読み取れるのは、単に「原油バブル」崩壊の影響にとどまらない、多方面からのデフレ圧力の強まりである。「被服及び履物」の▲0.1%規模の大きな押し下げ寄与の背景には、百貨店における婦人服売上高の落ち込みに象徴される、個人消費の顕著な悪化があると考えることができるだろう。「宿泊料」についても同じことが言える。さらに、「外国パック旅行」の値下がりには、原油反落や消費悪化に加え、為替相場が大幅な円高になったことが寄与している。原油など国際商品市況のバブル崩壊、景気大幅悪化による需給の緩み、大幅な円高から、日本の物価状況は、いわば「複合デフレ」の様相を示し始めた。

 

 都区部CPIの1月分などから試算すると、「ガソリン」「被服及び履物」「生鮮食品を除く食料」「宿泊料」「外国パック旅行」などが押し下げ方向に寄与する結果、全国CPIコアの次回1月分は前年同月比▲0.1%と予想される。そうなれば2007年9月以来、16カ月ぶりのマイナスということになる。

 CPIや鉱工業生産の結果は、景気・物価といったファンダメンタルズ面のダウンサイドリスクがいかに大きいかを再認識させる機会になったと考える。筆者は引き続き、長期金利が低下余地を模索していくものと予想している。