資源に乏しい日本から見るとうらやましすぎるロシアの宝の山、ノリリスク鉱山。世界最優良のニッケルの鉱脈に、プラチナ、パラジウムのオマケつきという豪華な鉱山に、世界の自動車産業が依存していることを前回紹介した。
しかし、この鉱山の周辺は世界で最も汚染された地域の1つと呼ばれているというオチがある。
住民に深刻な健康被害が蔓延しているわけではないので、世界で最も汚染されたというのはさすがに大げさかもしれないが、この一帯の土壌が重金属で激しく汚染されていることは確かである。
精錬工場の老朽化が著しく、環境対策がいい加減だったことで、相当量のニッケルや銅などの重金属が垂れ流されていた。「ノリリスクの土は汚染されすぎているのでニッケルや銅の鉱石として利用できる」と揶揄されている。
このニッケルをたっぷり含む汚染土壌。普通だったら忌み嫌われる有害産業廃棄物扱いだが、そんなものでも喉から手に出るほど欲しがったであろう国があった。戦時中の我が大日本帝国である。
日本に全くないニッケル資源
現在のニッケルの最大の用途はステンレス鋼であるが、ニッケルを鉄に混ぜると錆びなくなるだけではなく、粘り強くなる。また、耐熱性を与えることができる。こうした性質を生かして特殊鋼の製造に用いられる。
特殊鋼は機械の中で強度や耐熱性が必要な部分に不可欠で、自動車でもエンジン部品などに用いられている。
兵器は機械の一種であるだけではなく敵にやられないための装甲が必要であるため、通常の機械以上にニッケルが要る。戦争にもニッケルが不可欠ということになる。
しかし、日本にはニッケルの資源がない。日本はニッケルに限らず他の金属資源もないのだが、“ない”のレベルが違う。他の金属資源が少しはあるのに対し、ニッケルの資源は全くないのである。