理工学部のある後楽園キャンパスは、
人と企業のコラボレーションを推進

 中央大学は、1885年に増島六一郎ら18名の若き法律家が神田錦町に開設した英吉利(イギリス)法律学校を起源とする私立大学。「實地應用(じっちおうよう)ノ素(そ)ヲ養(やしな)フ」を建学の精神とし、具体性や実証性を重視する実地応用に優れた人材を育成している。

中央大学は、多くの司法試験合格者数を輩出しており、数は常に全国トップクラス。その人材は、政界・官界・実業界をはじめ多くの業界で活躍の場を広げている。そのため一般に「法科の中央」として知られている。

その実績から「中央大学=文系」という印象を持つ人も少なくないが、実際は6学部、7大学院研究科、3専門職大学院を擁する総合大学だ。法学、経済学、商学、文学、総合政策学の学生たちは多摩キャンパス(東京都八王子市)で、理工学部の学生たちは後楽園キャンパス(東京都文京区)でそれぞれ学んでいる。

「中央大学というと、本部が置かれている多摩キャンパスのイメージが強いようだが、都心にも後楽園キャンパスや市ヶ谷キャンパスもある。特に理工系の学生が学ぶ後楽園キャンパスは、東京23区の中央部に位置し交通の便もいい。人や企業との交流にも適している」と、理工学部長・理工学研究科委員長の樫山和男氏は話す。

中央大学 理工学部長・理工学研究科委員長
樫山 和男 氏
工学博士(中央大学)
専攻分野:応用力学・計算工学

後楽園キャンパスは、東京メトロ丸ノ内線・南北線、都営三田線・大江戸線、JR中央・総武線の5路線を使える場所にある。アクセスの良さを活かし、企業や大学とのコラボレーションや、学会やシンポジウムの会場として活用されることが多い。後楽園キャンパスに通う学生は、非常に恵まれた環境のなか、実地応用の素を養っているのだ。
 

総合大学ならではの文理融合の取り組み

 中央大学は、総合大学として文理融合の取り組みも行っている。
その1つが、「ファカルティリンケージ・プログラム(FLP)」だ。FLPとは、所属学部で学びながら、学部の域を超えて設けられた5つのプログラムを体系的に学ぶことができるプログラムこと。学部を横断したゼミ活動などを通して、学部の枠を超えた専門知識の習得と問題解決能力を高めることができる。

また「研究教育クラスター」という学部・学科の枠を超えた横断型の研究教育組織も用意。「本学には、理工系だけでも110を超える研究室があり、スペシャリストが点在している。ロボティクスやデータサイエンス・AI、感性工学・認知科学、防災・減災など、強みとなり得るコンテンツを持っているものの、その要素技術が多くの学科に亘るため、これまで外部から見えにくいという課題を抱えていた。そこで、学科の壁を取り去り、コンテンツを軸にスペシャリストを1つのグループとした」と語るのは、前理工学部長・理工研究科委員長の石井靖氏。

中央大学 前理工学部長・理工学研究科委員長
石井 靖 氏
工学博士(東京大学)
専攻分野:物性物理学・固体電子論

中央大学の総合的かつ発展的な取り組みは客観的にも評価を受け、文部科学省が2016年度より開始した「私立大学研究ブランディング事業」では2年連続で選定された。

2016年度に選定された「比較法文化プロジェクト」(代表者:専門職大学院法務研究科教授 佐藤信行氏)は、世界最大の経済発展セクターでありながら異なる法文化伝統が存在するアジア・太平洋地域を対象に、法秩序の多様性を解明し、その多様性を協調的に併存させ、統合止揚(コンバージェンス)する方法を研究し、実務へ反映することを目指している。

2017年度に選定された「災害適応科学プラットフォーム開発プロジェクト」(代表者:理工学部教授 有川太郎氏)は、災害時における避難や防護施設の脆弱性および地域活動の持続性や将来性を踏まえたまちづくり手法の提案を目標に、洪水や津波による浸水、構造物の脆弱性、避難行動、人口予測、および災害に関わる法律などをデータベース化し、それらを自由にかつ便利に利用できるプラットフォームの構築を目指している。

このプロジェクトは、法律や経済といった領域も関わっており、「学部・学科を超えた取り組みにより、総合大学の強みをより強化していく狙いがある」(樫山氏)とのことだ。

2つのプロジェクトはいずれも文系・理工系の知見を結集した学際的な研究プロジェクトとして展開しており、総合大学としての強みを存分に生かした取り組みとなっている。

このように、さまざまな施策・プロジェクトを通じて独自色を打ち出している中央大学。その進展に応じて、「實地応用ノ素ヲ養フ」同校の取り組みに対する認知も広がっていくことになるだろう。
 

学生たちが将来「実地応用」に携わるための「素」を養う

 ここまでは、中央大学の取り組みについてみてきた。次に、中央大学が実地応用に優れた人材を育成している手法について見ていこう。

「實地應用ノ素ヲ養フ」の建学の精神について、石井氏は「『実地応用』は学生たちがそれぞれ将来において展開する部分。本学の役割は、学生が将来、実地応用に携わるための『素』、即ち資質を養うことだと考えている」と説明する。

そのため中央大学では、実地応用の基礎となる「知識」のみならず、学生自身のさまざまな「力」を伸ばす教育を重視している。

樫山氏は、「理工学部の学生の場合、専門分野の基礎力・応用力は当然として、『対応力』『交渉力』『課題への挑戦力』などを身につける必要がある」と話す。

そこで理工学部では、業績が優れる人の行動様式や特性を分析し、実際の成果に繋がる行動特性(コンピテンシー)を用いた独自の教育システムを展開している。「コミュニケーション力」「問題解決力」「専門性」など8カテゴリー、36キーワードに亘るコンピテンシーを設定し、それぞれレベル0からレベル5まで6段階の評価基準を設けている。

また、コンピテンシーの一部は中央大学全体の評価基準として活用しており、学生は「C-compass(シーコンパス)」というシステムを活用して、自らのコンピテンシーを自主的・継続的に確認し、向上を図ることができる。

「コンピテンシーを用いた教育システムは、情報工学科が中心となって作成したモデルを全学に展開している。学生は、この教育システムによって設計された授業などを通じてこれらの力を身につけ、多くの学生が卒業後グローバルに活躍している」と樫山氏。

このように、中央大学は総合大学のメリットを活かし、文理融合を進めている。その中で、文系/理系といった枠組みや「学部・学科という砦」をなくすことで、新しい分野を切り開こうとしているのだ。

現代社会では、課題が山積している。その多くは、文系/理系の垣根を越えたものばかり。それらを解決していくには、文理融合を実現し「(實地應用ノ)素ヲ養フ」ことが、これまで以上に重要なものとなるだろう。そのため、中央大学の活動に注目が集まっている。
 

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