みちびき初号機のCG画像(JAXA提供)

 合計6機。2017年に種子島宇宙センターから打ち上げられたH-IIAロケットの機数だ。これは過去最高のペースである。このうちの3機、6月1日に打ち上げの34号機と、8月19日の35号機、10月10日の36号機は同じシリーズの衛星を宇宙へと運んだ。

 打ち上げられたのは、「みちびき」衛星。日本の測位衛星システムを構成する2号機から4号機である。2010年に試験衛星として打ち上げられた「みちびき」初号機と合わせ、2018年に4機体制で測位サービスを開始する。「みちびき」は日本版GPSとも呼ばれ、多様な応用分野と新たなビジネスチャンスの創出への期待が高まっている。

 おそらくほとんどの人は、意識せずにすでに測位衛星サービスを日常的に利用しているはずである。スマートフォンの地図アプリが現在位置を表示できるのは、地球を巡る測位衛星システムからの信号を受信して、自分の位置を算出しているからだ。

 地球上では現在、全世界を覆う測位衛星システム(GNSS、Global Navigation Satellite System)が4つ稼働している。最も馴染みがあるのは、アメリカの「GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)」だろう。このほかロシアの「グロナス」、欧州の「ガリレオ」、中国の「北斗」も全世界をカバーする測位衛星システムとして動いている。いずれも20機以上の衛星から構成される大規模なシステムだ。

 GPSやグロナスとは違うタイプの測位衛星システムもある。地域測位衛星システムと呼ぶものだ。代表例が「IRNSS」。インドが運用しており、インド洋からインド亜大陸、アラビア海にかけてカバーしている。日本の「みちびき」は日本版GPSと呼ばれるが、全世界を覆う測位衛星システムではなく、IRNSSと同様の地域測位衛星システムに位置付けられる。

「準天頂軌道」とはなにか

 「みちびき」は次のような特徴を持っている。

(1)衛星が日本上空の滞留時間の長い、準天頂軌道という軌道に打ち上げられており、はるか上空から主に日本周辺を重点的にカバーする。
(2)GPSとの互換信号を送信し、GPSと一体となって測位サービスを提供する。
(3)高精度のcmオーダーの測位を可能にする補強信号を送信する。