新しい年を迎え、心機一転、とばかりに一年の計を立てた。しかし、毎年がデジャヴ。二流政治家の所信表明同様、全く進歩のない自分が恨めしい。

命名が長寿の大ヒットを生んだミレニアム島

 そう思いながら見ているテレビには、いつもながら、新年を迎えた様々な地域の様子が映し出されている。そんな時、まず登場するのが、世界で一番早く初日の出を迎える地、ミレニアム島である。

 かつてはカロリン島と呼ばれていた太平洋に浮かぶ小島は、1995年、日付変更線をその東に引き直した際、ついでに改名された。

キリバスの青い海

 日付変更線の東西にまたがり国内に2つの日付があった島嶼国家キリバスがそれを統合したわけだが、命名の方は、数年後に訪れるミレニアムの変わり目に、「最初に新ミレニアムになる地」としての注目を集めることを当て込んでのものだった。

 新ミレニアムばかりか以後も年末年始定番の地となったのだから、国家戦略としては大正解だった。

 フェルディナンド・マゼラン一行が世界一周するまで認識されることもなかった日付の矛盾も、世界を股にかける船乗りたちが増加するにつれて、太平洋を西から東に横断すれば日付が1日戻る、といった経験則で対応するようになっていた。

映画版『80日間世界一周』(1956)の日本公開時発売されたノベライズ本

 しかし、一般人には全く無縁なこと。それを世界に知らしめることになったのが、ジュール・ヴェルヌの冒険科学小説「80日間世界一周」であった。

 世界一周を試みる主人公の英国紳士フィリアス・フォッグは、数々の困難を切り抜け一周には成功したものの、予定の80日という期限を1日オーバーしてしまう。

 ところが、太平洋を西から東へと旅していたために、実のところタイムオーバーではなかった、というのがオチである。

 物理的な時間に関しては英国ロンドンで帰りを待っていた紳士たちの過ごした「24時間×80日間」と、フォッグが「実際に過ごした81日間の時間の総計」は同じなのだが、人間として実感する生活日数には明らかに1日のズレが生じたわけである。