しかしながら、ヤマト1の船体は全長30メートル全幅10メートルほどで総トン数185トン、そして最大速力は8ノットにすぎず、潜水艦やコルベット(小型高速軍艦)などの軍艦の電磁推進化にとっては、最初の第一歩という段階であった(ちなみに、海自の「そうりゅう」型潜水艦は全長84メートル、全幅9メートルほどで、基準排水量2900トンである)。

 軍艦に搭載される電磁推進システムは、最大速力30ノット以上の推進力が最低でも求められる。その実現には、超強大な磁力を発生させる超小型の推進装置の開発が必要であるが、その後、日本ではヤマト1を発展させた研究開発は行われていない。

「無音」に近い夢の潜水艦である電磁推進潜水艦は、各国海軍も手にしたいとは考えている。だが、あまりにも実現が困難であると考えられているため、日本での研究開発を注視していたアメリカやヨーロッパ諸国でも、本腰を入れた電磁推進潜水艦の開発は行われなかった。その代わりに、原子力潜水艦やAIPを含む通常動力潜水艦などでの静粛性の強化に努力を注いできたのである。

 したがって、これまでに“誕生”した無音潜水艦は、映画にもなったトム・クランシーの小説『レッド・オクトーバーを追え』に登場するソ連海軍の「キャタピラー・ドライブ」を備えた「レッド・オクトーバー」(もちろん創作)だけということになる。

しぶとく研究開発を続けてきた中国

 ヤマト1の成功から25年経ち、日本では神戸海洋博物館に展示してあったヤマト1は撤去され(2016年)、解体されるという。ところが、(中国船舶重工集団公司や中国軍当局の発表が真実ならば)日本で芽生えた技術を実現させつつあるのが中国ということになる。

 そして、近い将来には、超強大な磁力を発生させる超小型磁気推進装置を搭載した無音潜水艦、中国版「レッド・オクトーバー」(おそらく、097型攻撃原潜)が南シナ海や西太平洋を潜航することになるかもしれない。そのときこそ、海上自衛隊とアメリカ海軍は中国海軍に太刀打ちできなくなるのである。