「電磁推進潜水艦」とは?

 原子力にせよ通常動力にせよAIPにせよ、これまでの潜水艦は、いずれも動力発生装置でモーターを作動させて艦外にあるプロペラ(スクリュー)を回すことで推進した。そして、やはり艦外に取りつけられている各種舵を用いて上下左右への方向転換をする方式であった。

 ところが電磁推進潜水艦は、騒音発生の源となる原子炉、ディーゼルエンジン、モーター、スクリュー、舵などを必要としない「磁気推進システム」と呼ばれる推進装置でコントロールされることになる。

 磁気推進システムとは、吸入導流管で推進装置へ海水を取り込み、推進装置内の磁力発生装置で推進出力を発生させ、噴出導流管から海水を押し出すことにより潜水艦が推進するという仕組みである。そして、推進器を上下左右に動かすことにより、舵などの伝統的装置を用いなくとも方向転換が可能となる。

 もし、電磁推進潜水艦が登場したならば、上記のような騒音発生源が不必要となり、無音に近い極めて静粛な潜航が可能となる。つまり、より敵に探知されずに、潜水艦が行動できるようになる。ステルス性が最大の武器である潜水艦にとって、静粛性に優れているということは、最強を意味する。そのため、世界中の海軍にとって電磁推進潜水艦はまさに夢の潜水艦ということになるのだ。

世界初の電磁推進船「ヤマト1」

 ただし、潜水艦をはじめ軍艦を高速で動かすためには、巨大な磁力を発生させなければならず、技術的に極めて困難とされている。実際に、世界中でこれまでに誕生した電磁推進船は日本の「ヤマト1」(ヤマトワン)という実験船だけである。

 ヤマト1は超伝導電磁石を利用した推進装置を左右2機(左推進装置は三菱重工が、右推進装置は東芝がそれぞれ製造した)備え、1992年6月16日に、神戸港にて自力航行に成功した。

日本で製造された世界初の電磁推進船「ヤマト1」(筆者撮影)