第1回「台湾は日本が近代国家に育てた」
第2回「国民は二の次になった日本の政治家」
第3回「台湾と日本で新しいアジアの時代をつくろう」
マット安川 李登輝閣下は日本統治下の台湾に生まれ、敗戦によって日本が台湾統治を放棄するまで「日本人」として生き、次いで中華民国の「中国人」として生きてきました。しかしその実は、「台湾経験」に裏打ちされた強烈な自意識を持つ確固たる「台湾人」です。
混迷を深める日中関係そして東アジア情勢を、日本と中国互いの隣人として、同時に当事者として捉えられる稀有な人物であると言って過言ではないでしょう。
船頭がどこへ向かおうとするのか一向に見えないばかりか、そもそも船頭がいるのかさえ疑われる日本は、いまこそ閣下のことばに耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。
かつて日本には国家百年の計があり、それを支える教育政策があった。ことばの端々からそのことがうかがわれたインタビューの最終回。日本への力強いメッセージが語られます。
日本人はなぜ中国にぺこぺこ頭を下げるのか
李登輝 日本においては指導者のリーダーシップの不在というようなことが言われますが、アメリカが何か言うたびに「Yes, Yes」とか、ことあるごとに中国に頭を下げる必要はないんですよ。
私が分からないのはね、いまの日本の政権を握った人たちは、なぜどの人もこの人も中国に対してペコペコ頭を下げているのか。これだけ実力のある国が・・・でしょ?
田中(角栄)・大平(正芳)以降、この状態がクセになっちゃっている。(日本は田中首相・大平外相のときに台湾との日華平和条約を廃止し、日中国交正常化を実現させた)
しかし考えてみれば、やっぱりアメリカは国際的に一番力があるし日米同盟もあるし、将来における西太平洋の主導権を誰が握るかという問題もある。
やはり日本、台湾、アメリカの関係をうまく維持するように、昔のクラシカルな連中が考えるようなやり方ではなくて、自由諸国、民主主義諸国がお互いに平和的にやっていく方向で解決しなくちゃならないんです。
日本にもそういう外交官が出てきて、アメリカとこういうことをちゃんと話し合う。それにはまず第一に、総理が非常に大事です。総理がこういう気持ちでアメリカと話し合う。