最近、テレビで奇妙なCMが放送されている。宇宙から地球に向かって隕石が飛んでくる。ソフトバンクの代理店で、商品の案内をする女性がしゃべっていると、左手が無意識に上がってしまう。客がそれを見て指摘し、商品案内の女性は「なんか変」と言う・・・。

A案(現在の進め方の延長)かB案(民間のアクセス会社を設置)かを選ばせるソフトバンクの広告(ソフトバンクのホームページより)
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 一見、何のCMか分からないが、これはソフトバンクの「光の道」のキャンペーンである。

 左手を上げるのは、「AかBか」というアンケートのB案(向かって右側)を選ぶという意味らしいが、この30秒のCMだけでは、ほとんどの人は意味が分からないだろう。

 以前の記事でも紹介したように、もともと「光の道」は原口一博前総務相が提唱したものだ。当初は「全国に光ファイバーを普及する」という話だったが、特定の物理インフラを政府が推奨するのはおかしいという批判を浴びて、「全国にブロードバンドを普及する」という話に軌道修正した。

 ところがソフトバンクは、文字通り光ファイバーを全国100%に敷設する「アクセス回線会社」案を発表した。

 現在の電話線(銅線)をすべて強制的に撤去して光ファイバーに替えれば、銅線の保守経費が浮くので、3兆円の工事費を賄って余りある。だから、NTTを構造分離して光ファイバーを別会社にしろというのだ。

 これについてはNTTの経営形態を検討する総務省の作業部会でも、賛成する意見はまったく出なかった。NTTも「銅線と光の保守費はそんなに違わないので、その差額で5兆円以上の工事費を賄うことはできない」とソフトバンク案を否定した。

 私も孫社長とUstreamで対談したが、「こんなリスクの大きい計画を実行して、失敗したら誰が負担するのか。アクセス回線会社の株主は誰で、社長は誰なのか」と私が質問しても孫氏は答えず、130枚も用意してきたスライドを一方的に説明した。

孫正義氏の奇妙な執念の背景には何があるのか

 関係業界もみんな反対で、すでに自前のインフラを引いている電力業界は「ソフトバンクは自分の金を使わないでNTTのインフラにただ乗りしようとしている」と批判した。