財政支出と成長率の相関も大きい。ケインズが言ったように、政府が1兆円使えば(乗数を1としても)GDPが1兆円増える。金融政策とは違って、財政政策には明らかな効果があるのだ。これが最近、世界的に「ケインズ政策の復活」と言われる所以である。

 1980年代に先進国でケインズ政策が終わった原因は、金利が上がって財政赤字が拡大したことだが、ゼロ金利になると財政支出を将来に先送りしても負担増が生じないので、一時的には「財政ネズミ講」が可能になる。

 逆に言うと、このネズミ講は金利が上がると終わる。そういう局面が今すぐ来るとは思えないが、ゼロ金利で時間を稼いでいるうちに「アベノミクス後」の長期的な経済政策を考える必要がある。

「法人税ゼロ」の提案

 財政政策は重要だが、従来型の財政拡大は財源がなくなると終わりで、長期的効果がない。「教育無償化」とか「こども保険」などの財政政策も、成長率を高める効果はない。大事なのは税制改革、特に直接税から間接税への転換である。

 日本は所得税や法人税などの直接税の比率が67%と、EU(ヨーロッパ連合)の55%に比べて高い。これは消費税率が低いことが原因だが、それを是正しようとする政権は倒れ、安倍政権は増税を延期することで求心力を維持してきた。

 これに対して与野党の批判勢力は「財政が破綻する」と言うが、そういう危機が切迫しているわけではない。財政再建は国民にとっては手段であり、再建して何を実現するのかが大事だ。政治的にも、単なる緊縮財政では政権は取れない。

 私は法人税ゼロを提案したい。これは企業から税金を取らないということではなく、企業の利益に課税しないで支出に課税するのだ。具体的には消費税率を20%に上げてキャッシュフローに課税し、個人所得税も減税して税収中立にする。これはそれほど奇抜な提案ではなく、EUの付加価値税やアメリカ共和党の提案している国境調整税と同じ考え方だ。

 同様の税制改革は、アメリカ民主党が累進消費税としても提案している。これも所得税・法人税をやめて(消費が増えると税率が上がる)消費税にするものだ。どっちも直接税に異常に片寄っているアメリカの税制(直接税比率が77%)のバランスを是正しようというものだ。

 その最大の原因は、グローバル化で国際資本移動が自由になり、所得税率の高い国から資本逃避が増加したことだ。帳簿の操作でごまかしやすい(法人・個人の)所得より、稼いだキャッシュを使う国で課税する消費税のほうが合理的なのだ。