多国籍合同訓練が実施されているといっても、中国スパイ艦が活動していたのは公海上である以上、国際海洋法上違法というわけではない。しかし、リムパック参加国が、公式参加艦艇以外の情報収集艦を訓練海域に展開させるなどということは、リムパック史上初の出来事であった。

 たしかに多数の参加国の艦艇や航空機が一堂に会するリムパックは、効率よく各国海軍の様々な信号や電波などの電子情報を収集できる絶好の機会だ。とはいえ、そのためにスパイ艦を派遣するなどというのは、まさに参加国に対する背信行為以外の何物でもない。

 主催者である太平洋艦隊はじめ、米海軍やペンタゴンの首脳たちが怒り心頭に達したのは当然である。連邦議会でもとりわけ対中強硬派の議員たちがこの問題を取り上げ、「リムパックへの中国の参加は今回が最初であったが、同時に今回が最後となるだろう」と二度と招待しない方針を打ち出した(本コラム2014年7月24日参照)。

 しかしながら、リムパック2014が終了してしばらくすると、オバマ政権は再び中国海軍をリムパック2016へ招待した。そして当然、中国は招待に応えて参加した。

リムパック2016──日本侮辱事件

 リムパック2016では、中国海軍は前回よりも1隻多い5隻の艦艇を参加させた(もっとも2014年もスパイ艦を入れれば5隻だったが)。

 海上自衛隊は今回も巨艦「ひゅうが」を参加させ、威容を誇った。だが、相変わらず米国メディアの関心は中国海軍に向けられていた。

 中国海軍は前回のようにメディアに取り上げられるようなトラブルを起こすことはなかった。しかしながら、メディアの目にはとまらなかったものの、海軍間の慣行儀礼に著しく背く非礼を、海上自衛隊、すなわち日本に対して繰り返した。

 多数の参加国があるリムパックでは、それぞれの参加国が他のすべての参加国の代表団を艦艇などに招待してレセプションが行われる。各種訓練のみならず、このような機会を設けて相互理解や交流を図るのだ。