1 はじめに

 平成17(2005)年8月、陸上自衛隊を定年退官した私は、第2の人生に「大阪府庁危機管理室参事」という、願ってもない重責を頂きました。

 以来約4年間、大阪府にとって初の退職自衛官採用で前例がない中で、府庁、府域各市町村の皆さんをはじめ、消防、警察、海上保安庁など防災機関の方々のご支援を得、充実した勤務を終えられた今、当時を振り返って私が取り組んできたことをご紹介するのも日本の皆さんの参考になるのではないかと筆を執った次第です。

地震大国ニッポン、災害の犠牲者を減らす鍵は

防災の日の訓練で机の下に隠れる小学生たち。昔も今も同じだ〔AFPBB News

2 担当した業務

 退職自衛官採用に当たって大阪府が私に示した業務は、以下のようなものでした。

●防災・危機管理マニュアル類の見直し
●国民保護計画の作成補助
●訓練の企画立案、実施統制・指導
●職員研修の実施
●自衛隊、防衛省との連携強化

 また、地震災害など危機事象発生時の緊急対応は当然のことで、副知事以下、危機管理監、室長、担当課長・参事など15人が30分以内に登庁できるよう、府庁周辺のマンションを公舎として貸与され、単身赴任していました。

 防災・危機管理マニュアル、国民保護計画は既に府職員の勉強と努力により素晴らしい計画ができており、私はそれを勉強し、所要の修正意見を述べた次第です。

 訓練についても、阪神・淡路大震災以来、その経験を生かした震災対処訓練、「水の都大阪」ならではの水防訓練等危機管理室職員を中心に警察、消防、自衛隊と連携した実動訓練が華々しく行われていました。

 ただ、これら防災の日、阪神・淡路大震災の記念日などに合わせて行われる訓練は府民への啓発を目的に展示型が主体であり、危機管理職員には別の訓練が必要と感じ、図上訓練の普及を図りました。

 府の方々はさすが事務職、文章作成は手馴れたものですが、地図・要図の使用には不慣れなようでした。一方、地図・要図の使用は自衛官のお家芸です。

 そこで、有事混乱の中では地図を使った報告・通報は最も意思の疎通に便利なことを逐次普及し、地図の活用にも慣れて貰いました。