北朝鮮からの砲撃で韓国・延坪島(ヨンピョンド)の民間人が死亡したというニュースは、改めて朝鮮戦争は休戦中であって終結しているわけではないことを認識させるに十分なものだった。

目と鼻の先の悲劇に日本人はドラマを観ている思い

38度線を北朝鮮側から覗く

 そして犠牲となった2人の兵士は徴兵された20歳そこそこの若者たち。その死は徴兵制のある韓国の若者にとって決して他人事ではない。

 それに比べて、砲撃を受けた島の様子を伝える生々しい映像を見ても、我が国からこんなに近い地での出来事だというのに、日本人の危機感は希薄だ。残念ながら、自衛隊があるから安心し切っている、というわけではない。

 戦争放棄という大義があるから大丈夫、というのが一番の理由だろう。

 一方で、巨額の「思いやり予算」も与えていることだし、いざとなれば戦闘慣れした同盟国米国が何とかしてくれるだろう、などと、結局は米国任せで、大半の人はあまり細かなことまで考えていない、と言うより、考えたくないのである。

 自国民にはやらせづらい戦闘を外国人任せにしたものと言えば、アルジェリアを中心とした北アフリカの面倒な植民地経営に利用するため、世のはぐれ者たちを集めたフランス軍外人部隊のことを思い出す。

初めて日本語の字幕スーパーが使われた映画

 初めて日本語字幕スーパーが使われた映画『モロッコ』(1930)でのゲイリー・クーパーとマレーネ・ディートリヒの明日なき姿はそのイメージを固定するに十分だった。日本では大ヒットしたエト邦枝の歌謡曲「カスバの女」の果たした役割も大きかった。

ジブチのシェラトンホテル。私の滞在時は国連軍の宿舎になっていた

 しかし、「ここは地の果てアルジェリア・・・明日はチュニスかモロッコか」と歌うはぐれ者の心境も、決して日本人自身から出たものではなく、多くの外人部隊ものの映画から得た欧米人の目の拝借に過ぎなかったのである。

 植民地が独立してから半世紀が過ぎた今も外人部隊は健在で、元フランス領ソマリランドであるジブチにはフランス軍外人部隊が駐留している。

 今やテロリストの訓練場と化したソマリアやイエメンに近いこともあり、世界の対テロ戦争の重要拠点となっているのだ。