新年早々、中国が南シナ海において空母「遼寧」の搭載機の発着訓練を行った。これは昨年12月にトランプ次期米国大統領が台湾の蔡英文総統と電話で会談を行い、その後ツイッターで「一つの中国」政策を軽視するような発言をしたことに対する対抗措置と見られている。
現代において空母を当該要地に派遣し示威行動を行うことは超大国の特権である。航空機を積んでいるから、内陸奥深くまで攻撃することができる。巡洋艦やフリゲート艦を派遣するよりも、相手国に対する恫喝効果は高い。
台湾海峡で危機が生じた時や北朝鮮が問題行動を起こした時に、米国は空母を派遣して示威行動を行ってきた。それは中国の指導者にとって極めて不愉快な経験だったのだろう。だから大国になった今日、それを真似て台湾や東南アジア諸国にプレッシャーをかけようとしている。米国の出方を伺っているようにも見える。
莫大な費用がかかる空母の維持
ただ、空母によって他国にプレッシャーをかけるためには多額の費用が必要になる。まず、建造費が高い。艦載機も用意しなければならない。それだけではない。飛行機が空母に着艦するのが難しいために、高い技量をもつパイロットを育てなければならない。そして、その技量を維持することが難しい。日常的な訓練が必要になる。
飛行機は尾部に取り付けたフックを空母に張った鋼鉄のワイヤーに引っかけることによって着艦する。現代のジェット機は巨大で高速だから、着艦する際に極めて強い力がワイヤーにかかる。特殊なワイヤーでないと切れてしまう。現在、そのようなワイヤーを製造できるのは米国とロシアだけとされる。中国はワイヤーをロシアから輸入していると言われるが、そのワイヤーは何回か使うとダメになる。このことだけを見ても、空母を維持するのに莫大な費用がかかることが理解されよう。