アメリカンドリームを返してくれ──。
これが今回の中間選挙で聞かれた最も悲痛な米国民の叫びだった。アメリカンドリームがなくなったら、米国が米国でなくなってしまう。それを呼び戻せないどころか、もしかしたら永久に消えてしまったように思わせる現在の政権も、議会で長年あぐらをかいてきたベテラン議員も、政党にかかわらず全員クビだ。そんな声が全米の街角で聞かれた。
「アメリカンドリーム」とは、貧しい生まれから大成功を収めることを指しているように思われているが、一般的には豊かな中産階級の生活を手に入れることを指す。
最も分かりやすいのが、郊外に大きな一軒家を持つことだ。いかなる生い立ちの人でも、努力すれば安定した収入と職を得ることができ、家を持ち、子供たちを大学に通わせるような生活ができる。それが米国の素晴らしさだと、誰もが誇りに思っていた。
典型的な中流の生活は、テレビドラマや映画を通して全世界に宣伝され続けてきた。それを見て、世界中からアメリカンドリームを追う人々が移民してきた。
それが、今では63%の人たちが「この先、今の生活水準を維持していくのは無理だ」と感じている(「ニューズウィーク」調査)のだ。
豊かな中産階級の生活が過去のものに
多くの米国人が、豊かな中産階級の生活は過去のことだと思い始めている。そう感じるのは、いつまで経っても回復しない高い失業率が原因だ。
現在、全米の失業率は9.6%。しかし、黒人に限ると16.1%、ヒスパニックでは12.4%となる。また、仕事を探すのを諦めた人や、やむを得ずパートの仕事についている人を合わせると、実際の失業率はおよそ17%とも言われている。
失業したのは、主に中産階級の人たちだ。しかも、一度失職すると2年以上も再就職できないというのが、今回の経済危機の特徴だ。
特に40代以上の人たちの仕事がない。子供の学費やローンの支払いなど、最も物入りな時期に長い失業生活を強いられ、絶望的な思いで生きている。
米国の企業や経済状況は回復の兆しを見せている。しかし、それは失業率に反映されない。国民の間には、経済がいくら上向いても高水準の失業率はずっと続くのではないかという不安が蔓延している。