中国で起業して、はや15年がたった。今でこそ軌道に乗ったが、そこに至るまでにはさまざまな出会いや紆余曲折があった。中国に渡ったきっかけや起業に至るまでの道のりを、振り返りながら書き記してみたい。
自分が中国で必死に生きてきた記録が、これから中国で起業したいと思っている人にとってほんの少しでも役に立ってくれれば幸いだ。
中国へ行ったきっかけ
大学は文学部の出身で、これといった将来の展望もないまま単なる昔からの興味で中国近代史を専攻していた。当時は就職氷河期で、文学部の学生に就職口なんかあるわけがないこと、大学時代に短期留学で中国へ行ったことがあり中国語をマスターしたいと漠然と思っていたことなどの理由で、何となく中国の上海に留学することを決めた。
子供の頃から父親に「人口が多い国が最後は勝つ、これからは中国の時代だ!」と聞かされていたことも影響しているかもしれない。でも、後になって聞いてみると父親は「そんなこと言ったか?」などとまったく覚えていないようなので、僕が中国へ行くことを決めたのはほんの偶然にすぎない。
日本で仕事が見つからなかったわけではなかったけれども、本音を言えば自分がやりたいと思う仕事ではなかった。だから、しばらく中国へ留学して、1年か2年経てば景気も回復して、さらに中国語もできるとなれば、自分がやりたいと思う仕事も見つかるようなるだろうと思っていた。
だが、今でも日本は「失われた20年」もしくは「30年」などと言われる状態なのだから、僕のあてはまったく外れていたことになる。
留学生活の始まり
なので、志や計画のようなものは一切ないまま僕の留学生活は始まった。入学したのは、上海にある華東師範大学。日本でいう教育大学に当たるところだが、僕が入ったのは4年間学ぶ学部ではなくて、中国語を学ぶための「漢語班」というもので、学生は皆外国人だった。
その大学は当時から既に留学先としては有名で、学生は300人くらいいた。日本人もたくさんいたが、人見知りの激しい僕はなかなか打ち解けることができず、むしろ言葉がほとんど通じないコンゴの人やフランスの人たちと仲良くなった。