日本のものづくり

神様じゃなくたって不可能を可能にできるんだ

2010.11.12(金)  岡野 雅行

誰も思いつかないような「まったく新しい発想」というのは、従来の発想の延長から生まれるものじゃない。既存の考え方を壊すことによって、初めて新しい発想のスタート台に立てるんだ。

 だから、机にずっとかじりついていたり、ただ真面目に考えたりしていても、なかなか思い浮かびはしない。

 脳みそに光が差し込むような発想というのは、視点をガラっと変えたり、別の環境に身を置いたり、何かまったく違うことをしていたりする時に、突然、湧き出るものなんだな。

 それに比べると「応用」っていうのは、誰も考えたことがない発想よりはもう少し楽というか、やりやすい。日本の製造業が得意なのも、この応用なんだけど。

 応用とはどういうことかと言うと、既存のものを捉える視点を裏側に変えてみたり、全然、関係のない別のものを結びつけたりすると、さらにもっと素晴らしいものや、まったく別の新しいものが生まれたりするんだよね。

 ものをつくる仕事ってのは、本当はこの「発想」と「応用」の繰り返しじゃなきゃいけないんだよ。

新しい発想と従来の技術の活用で誕生した注射針

 どこの世界でも、お客ってのはみんな無理難題を言ってくるものだ。だからこそ、おれはやりがいを感じるんだけど、その難題の1つが「痛くない注射針」の開発だった。

 いろんな本に書いた話だけど、知らない人のためにちょっと説明しよう。医療機器メーカーのテルモという会社があって、そこの社員がうちを訪ねてきた。何かと思ったら、注射針をつくりたいっていうんだよ。それも「今までにないやつを」ってね。

 注射針なんてのは、どこの会社の製品も今はほとんど同じだ。韓国のメーカーも安いのをどんどん作って日本に輸出している。テルモのお得意さんも安い方に流れていってしまっていて、いわば先行きが暗い商品だったんだね。

 だからテルモは、どこにもないような付加価値をつけた注射針をつくって、お客を自分の商売のフィールドに持ってこようと考えた。

 「痛くない針って、どんなものを考えてるんだい?」って聞いたら、蚊の針と同じような注射針をつくりたいって言うんだ。おれは、「なんだそりゃ」って思ったね。

 いろいろと詳しく聞いてみると、糖尿病の人はインスリン注射を年間に1000本も打たなきゃならないらしいんだけど、何度も打っていると注射した跡がコチコチに硬くなって針が通りにくくなってしまうんだそうだ。だから、それを解消するために、もっともっと細い針が必要なんだ、っていうことらしい。

 具体的につくりたいのは、針の長さが20ミリ、穴の直径が80ミクロン(100分の8ミリ)、外径が200ミクロンと、今までの注射針の3分の2の太さで、まるで髪の毛のように細い注射の針なんだ。

 細いだけの注射針をつくるのは、技術的にはそれほど難…

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