前編(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48062)で紹介したように、私たちの研究結果から、子宮頸がんワクチン騒動では新聞が過度にリスクを強調した報道を続けている問題が示されました。
これまでもメディアは必ずしもワクチンのリスクについてバランスの取れた報道をしてきたわけではなく、過去には海外でも同様な事例が起こっています。
1970-80年代には百日咳ワクチンに対する反ワクチン活動がメディアを通じて世界中で拡散し、日本をはじめ、スウェーデン、英国、ロシアで接種率が大きく低下し、その後の百日咳の流行を引き起こしました(Lancet 1998; 351:356-61.)。
またMMR(麻疹、おたふくかぜ、風疹)ワクチンが自閉症を引き起こすという報告が著名な医学誌Lancetに1998年に掲載(のちに撤回)されると、メディアで大きく報道され、英国を中心に接種率は大きく低下しました。
特に新聞報道という観点からは、英国ウェールズの新聞がMMRワクチンに対するネガティブキャンペーンを行った際に、同誌の購読地域での接種率が低下したと報告されています(J Epidemiol Community Health 2000; 54:473-4.)。
札幌では接種率が70%から0.6%に急低下
今回、日本の子宮頸がんワクチン騒動においては、北海道大学のシャロン・ハンリー先生らが、札幌での子宮頸がんワクチン接種率が約70%から0.6%に低下したと報告しています(Lancet 2015; 385:2571.)。
この間、日本中、世界中の専門家機構は「子宮頸がんワクチンのメリットはリスクを上回り、接種勧奨再開が望まれる」と繰り返し声明を出してきました。
日本産科婦人科学会は最も早い2013年9月の段階で声明を出していますし、その後日本小児科学会や2016年4月には15の学術団体が合同で声明を出しました。
WHO(世界保健機関)、EMA(欧州医薬品庁)、CDC(米国疾病予防管理センター)も同様の見解を繰り返し示しており、日本政府による積極的接種勧奨の差し控えは名指しで世界から批判されています。
しかしこれらの声明のメディアでの扱いは非常に小さく、世論の変化を起こすには至っておりません。