ラジオ少年の思い出
電気回路。私を魅了したその世界は物づくりの面白さとともに数学世界の扉を開けてくれた存在です。
電気回路の基本法則の1つがオームの法則E=IRです。電圧E[V]と電流I[A]と抵抗R[Ω]の関係で、公式を使うだけならば算数の四則で十分です。
10歳の私はラジオの製作に熱中していました。次第に電気回路を理解して回路設計も自分でできたらと思うようになりました。
ラジオの基本は、チューニング(同調)です。次が同調回路と共振周波数の公式です。私が始めて覚えた公式です。
(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで図や公式をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47829)
コイルは磁場にエネルギーを蓄え、コンデンサーは電場にエネルギーを蓄えることができます。コイルとコンデンサーをつないだ回路をつくるとその間をエネルギーが電気(正確には電荷)に変換され行ったり来たりする、振り子のような現象が見られます。
これが電気回路の共振現象です。LC共振回路は発振回路(交流をつくる回路)やフィルター回路(特定の周波数成分を取り出す回路)そしてチューナーなどに応用されます。
共振周波数f[Hz]がコンデンサーC[F]とコイルL[H]でどのように定まるのかを表したのが共振周波数fの公式です。
ツマミを回してチューニングしますが、ツマミの先にある容量可変型コンデンサー(通称バリコン)の軸を回転してCを変化させて(Lは固定)、周波数fを目的の放送局の周波数に合わせています。これが同調(チューニング)です。
10歳の私にとって、√記号やπ、そしてf、C、Lといった変数は初めての数学でしたが、ラジオというモノを相手にしているおかげで、不思議に数式にたじろぐことはありませんでした。むしろその逆で、電気回路を通して始めて知る数学世界にワクワクしました。
なぜラジオに円周率πが関係しているのか、疑問を抱きながらも公式に従って数値を計算したパーツを秋葉原のショップから購入します。半田ゴテを握り回路通りにラジオを組み立てます。
はたして、自作のラジオが公式の計算通りに選局できたときには感動しました。目に見えない数式がラジオの中に宿っている実感があったからです。