東京都知事選挙のポスター掲示板。戦後ずっと続いてきた「保守・革新」という対立にはもう意味がない

 東京都知事選挙は、参議院選挙より盛り上がりをみせている。保守が小池百合子氏と増田寛也氏に分裂して、今までとは違うアジェンダ(争点)で選挙が行なわれているからだ。その意味で、この選挙は参院選より重要だ。

 他方、街頭演説もしないで「戦争法案・憲法改悪反対」の集会で演説していたのが鳥越俊太郎氏だ。「参議院で改憲勢力が3分の2を超えたので出馬を決意した」という彼にとっては、都政なんかどうでもいいのだろう。60年安保から同じことを言い続けている鳥越氏は「超保守」である。

60年安保の亡霊を成仏させよう

 自民党は保守党といわれるが、その綱領をみても保守主義といえる思想はない。「反共産主義」というのは昔は意味があったが、今は言わずもがなだろう。1955年に再軍備に反対する吉田茂の自由党に憲法改正を掲げる鳩山一郎の民主党が合流したのだから、一貫した思想がないのは当然だ。

 唯一の党是といえるのは「自主憲法の制定」だが、これを可能にする衆参両院の3分の2を自民党は取ることができなかった。今回の参院選で「改憲勢力」が3分の2を超えたといわれるが、憲法第9条については公明党が改正に反対している。

 改正の発議ができたとしても、国民投票の過半数が必要だが、世論調査でも第9条の改正に賛成する人は3割以下だ。第9条を除外して改正しても意味がない。つまり「押しつけ憲法の改正」か「平和憲法の改悪反対」かなどというアジェンダは、存在しないのだ。

 とすれば、いったい日本の政党は何をめぐって対立しているのか。参院選の投票率が50%前後と低迷するのも、国民に政策の選択肢がないからだ。民進党のように共産党と「民共連合」を組んでも、支持基盤を狭めるだけだろう。