オバマ大統領が広島を訪問し、核兵器廃絶へ向けてのアピールをした。日本ではオバマ大統領の広島訪問が、あたかも“核廃絶に向けた世紀のイベント”であるかのごとく取り上げられていたようである。
しかし、それと平行して、アメリカをはじめとする国際軍事サークルで話題となっていたのは、「中国の報復核攻撃戦力が強化されている」という“核なき世界”とは隔絶した話題であった。
まもなく始動する核ミサイル搭載の中国戦略原潜
アメリカ国防総省が作成した2016年版『中国軍事レポート』では、「中国人民解放軍海軍は、戦略原潜による西太平洋海域での核抑止パトロールを2016年中には開始するであろう」との予測が述べられていた(「今年の『中国軍事レポート』はどこが不十分なのか」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46933)。それを受けてアメリカやイギリスなどのメディアや軍事関係者たちの間では、「そう遠くない時期に、中国による太平洋での核抑止パトロールが始まる」という情報が取り沙汰され始めた。
「戦略原潜による核抑止パトロール」とは、核弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦(いわゆる戦略原潜)を、敵方の探知しえない海中深く潜航させ続けて、「万一敵が自国に対して核先制攻撃を実施した場合、戦略原潜から核弾道ミサイルを発射して敵に報復攻撃を実施する」というシナリオである。このシナリオを実施する能力を保持することにより敵の核攻撃を抑止することが期待できるため、“核抑止”パトロールと呼ばれている。