ワシントンの北朝鮮研究専門家の間で、「金正恩第一書記の暗殺」という突然の事態に備えるよう米韓両国に提言する論文が話題を集めている。
発端は、韓国系の若手研究者が金書記の暗殺の可能性を4種類の具体的なシナリオとして描いたことだった。その内容が米国の論壇で広く提起され、論議を呼ぶようになった。
論議の出発点となったのは、米国の朝鮮半島研究学者らが発表の場とする学術誌「朝鮮研究国際ジャーナル」の最新号に掲載された「金正恩暗殺の可能性に備える」という論文だった。筆者は韓国系の若手研究者で、ワシントンのジョージタウン大学の大学院に籍をおくスンミン・チョ氏である。
チョ氏は、北朝鮮内部の不安定要因を考えると金書記の暗殺という可能性が十分にあり得ること、米韓両政府はその可能性に対応する行動指針などを決める必要があることを指摘していた。そのうえでチョ氏は、実際に起こりうる金書記暗殺の4種類のシナリオを提示した。
すると3月23日、ワシントンで最大級の経済系シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」の北朝鮮研究部門が、それらのシナリオを「金正恩暗殺」という報告書で紹介した。同経済研究所はワシントンの政策形成の専門家たちの間で強い影響力を持つため、「暗殺シナリオ」は広範な注視を集めるようになったのである。