1.概算要求1割カットとは?
今年は、防衛計画の大綱、それから空白となっていた中期防衛力整備計画が策定される年と聞いていたところ、平成23(2011)年度の各省庁の概算要求は前年度予算の約1割カットの要求とし、自民党政権下で行われたシーリング方式を復活させたと聞いた。
選挙のための政策で国家の存亡が危うくなっている
さらに各省庁は1割カットの分を「要望」として要求できるとし、その要望は「政策コンテスト」により総理大臣が決定するとのことである。
昨年行われた「事業仕分け」同様、「政策コンテスト」なるものは、本来国家的施策であるべきものだ。
しかし、国民生活そのものに直接反映するものが優先されれば、国家としての国際競争での生き残りのために必要な中・長期的視点に立った総合的施策に必要な分野が取り残されることとなるだろう。
リーマン・ショック以降の我が国の経済悪化は個人生活に大きく不安を与え、国家予算の税収減収とともに国家予算の削減を迫ってきている。
その中で国家予算の削減が謳われた平成22(2010)年度予算は、民主党の政策優先のため、国家として必要な分野での経費が大幅に削減された結果となった。
ギリギリまで追い込まれた予算カット
ここで、防衛予算が限界に来ている状況をつぶさに見ていく必要があろうと考えるものである。
まず我が国の防衛力整備の経費については、全額防衛省管理すなわち防衛省要求そのままの金額であり、しかも一般会計計上部分のみであり、防衛省は特別会計を管理していないのである。
しかも、その予算は近隣諸国の国防費が増大しつつある中で、平成14(2002)年から着実に削減されている。
防衛省として、平成15(2003)年には「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」の閣議決定や「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱について」の閣議決定についても、必要な防衛力整備達成のための確約ではなく財政の範囲内での工夫を求めるものであった。
現場は既に限界に達しており、拡大した任務と、その任務達成のためのヒト、モノ、カネが十分ではない状態に来ていると言えよう。