最近、起きた尖閣諸島を巡る日本と中国の衝突を、米国はどう見たのだろうか。
中国漁船が尖閣付近の日本領海に侵入し、海上保安庁の船の停止命令を無視して、2度も体当たりをしてきたという事件は、最終的に日本側が中国の脅しに屈する形で、拘留していた中国船の船長を日本の法的手続きをねじ曲げるようにして釈放してしまった。「日本の屈服」とか「日本の敗北」という評がしきりである。
だが、災いを転じて福となす、とでも言うのだろうか。日本の屈辱的な譲歩にもかかわらず、米国政府は同盟パートナーとしての日本への支持を、予想外の明確さで表明したのだった。だから米国では、今回の日中対立は「中国側の敗北」だと評する向きも少なくない。
米国は「日米で尖閣諸島を共同防衛する」ことを認めた
そうした評価を下す1人は米国の国防大学上級研究員のジム・プリシュタップ氏である。同氏は日本やアジアの安全保障の専門家で、下院外交委員会の民主党スタッフから出発して、国務省や国防総省で日本を含む東アジアの安保問題を担当した。
同氏は私に直接、次のように語った。
「米国は、中国がいざという際にこれほどの乱暴な出方をしてくるのでは、日本との同盟を強化せざるを得ないという反応を見せました。
オバマ政権のバイデン副大統領は『米国の中国への政策は今後まず日本を経なければならない』と対日同盟の重要性を強調しました。ゲーツ国防長官もマレン米軍統合参謀本部議長も、日米安保条約が尖閣諸島に適用されることを明言し、有事の際の日本への支持を鮮明にしました。これらはみな、中国の日本に対する脅迫めいた言動の結果だと言えます」
日米安保条約が尖閣諸島に適用されるということは、もし尖閣に第三国からの軍事攻撃がかけられれば、米国は日本と共同防衛の形で尖閣を守る責務があることを認めたという意味である。
もしも中国が尖閣に軍事攻撃をかけてくれば、米国は日本側に味方して反撃する、という意図の表明だと言える。この言質をオバマ政権からはっきりと取りつけたことは、日本側にとって大きな収穫だろう。
かつては日米安保の適用範囲外とされていた尖閣諸島
なぜなら米国政府は過去のある時期には、そういう場合の尖閣防衛の責務や意思を認めなかったからである。民主党クリントン政権の1990年代、時のモンデール駐日米国大使はニューヨーク・タイムズのインタビューに答えて、「もし尖閣諸島が(日米以外の)第三国の軍事攻撃を受けても米軍は防衛の責任はない」と述べていたのだ。