衝撃の事実!歯磨きは食事の“前”にすべきだった

誤解だらけの“食と歯”(後篇)

2016.02.19(Fri) 漆原 次郎
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西野 歯は本来、自然にしていれば脱灰したところが再石灰化して元に戻るものです。それにもかかわらず虫歯になったということは、何かしらの原因があるはずです。その原因を見つけて、改善するという考え方が大切です。虫歯ができたら削って詰めもので穴埋めをする、というのは応急の工事のようなものに過ぎません。

――虫歯の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

西野 下の表にあるような項目が、虫歯のリスクとなるものです。これらのリスクをなるべく改善するということが大切になります。改善できれば虫歯は自然に治癒します。

虫歯の原因となるリスクの項目。「ラクトバチルス菌」は、虫歯との関わりの強い乳酸菌で、糖質から酸(乳酸)をつくる。(参考:熊谷崇企画・監修『わたしの歯の健康ノート』を参考に筆者作成)

――この中でもとくに重要なリスクはありますか。

西野 やはりプラークです。前篇でもお話したとおり、プラークは虫歯をつくる菌の集合体です。ミュータンス菌などの菌が“接着剤”を出して歯の表面に付き、バリアも張ってその内側で菌を増殖させていきます。プラークの量を減らせば酸の量が減るので、脱灰が起こりにくくなります。

――プラークの量を減らすためには、どうすればよいでしょうか。やはり歯磨きを頻繁にするということでしょうか。

西野 歯磨きはたしかにプラークを取り除くために大切なのですが、その考え方ややり方がもっと大切になります。

 いま多くの方は、食後に歯ブラシを使って歯磨きをするということを習慣になさっていると思います。しかし、残念ながら、この方法は虫歯予防の点ではあまり期待されていません。

――どういうことでしょうか。

西野 まず、歯ブラシを使ってもプラークを十分に落とせません。たしかに、歯の正面に対しては、歯ブラシの毛先が垂直に当たるため力が加わります。

 しかし、プラークの多く付いている歯と歯の間に対しては毛先を入れても角度がないために力が加わらないのです。これは毛先が尖っていても同じこと。単純な理屈なのですが、なかなか理解してもらえません。

 歯ブラシについて効果的であるとする論文は1950年代以降からまるでないという話も聞きます。

プラークを除去するなら、歯磨きは「食事前」に

――では、どのように歯磨きをすればよいのでしょうか。

西野 歯ブラシは補助的なものと考え、デンタルフロスという糸を使うことです。歯ブラシよりはるかに評価されています。箱に入っているだけの糸のものありますが、Y字型のフォルダがついたタイプ(写真)は、どんな角度でも歯に沿って糸を挿れることができるためおすすめです。

Y字型のフォルダタイプのデンタルフロス。薬局などで売られている

 糸を歯と歯のあいだの根本まで挿れたら、向かい合った歯面のいずれかに糸を当て、力を加えながら持ち上げていきます。プラークは力を入れないと取れません。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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