「アラブの春」以前から、米政府はシリア政府転覆を画策していた――。
米連邦議会の調査機関である議会調査局(CRS)はこのほど、米政府がシリア政府の転覆を目論んでいた事実を記した報告書を公表した。
これまでも、米政府がシリアのバッシャール・アル=アサド政権の転覆を画策している話は、何度となくメディアに取り上げられてきた。
当欄でも、オバマ政権が米中央情報局(CIA)を使って特殊部隊をシリアに送りこんでいる動きを報告した(「シリア・アサド政権打倒で第3次世界大戦の危険性も」)。けれども同報告書では、政府機関がアサド政権打倒を記している。
2005年に決まっていたシリア転覆政策
公表された報告書タイトルは「シリア内戦:概況と米政府の反応」。CRSはまがりなりにも税金で運営されている政府機関である。
米議会図書館に所属するCRSは上下両院議員や連邦議会の委員会の要請によって諸政策や情勢分析を行っている。政府機関であっても政治的には中立で、時には現政権を批判することさえある。
同報告書で注目されるのは、2005年にはすでに米政府内にシリア政府を転覆させるコンセンサスができていたという点だ。アラブの春は2011年であり、それ以前からアサド政権打倒の意思があったことが分かる。
報告書は全31ページ。15ページ目からシリア国内で達成すべき米国の目標が述べられている。端的に述べると、シリア国内の反アサド勢力を使って傀儡政権を作るという内容だ。反アサド勢力と行っても、もちろんイスラム国(IS)以外という意味だ。
「・・・(アシュトン・)カーター国防長官が描くシナリオとしては、シリアのアサド大統領を政権から降ろして、シリア国内の反アサド勢力と米国がパートナーとなって連合政権を築くことである・・・」
すでに議論されてきている内容ではあるが、政府の報告書に記されたという点で、米政権の意図が鮮明になった。