イスラム国(IS)の蛮行が続いている。
いまさら同国によるテロ攻撃事件を列挙しても、読者の方は関心を持たれないかもしれない。あまりにも頻繁に過激な悪行が繰り返されているからだ。
1月21日にはリビアの地中海沿岸部ラスラヌフにある石油施設が襲撃された。またシリア中部ホムスでは26日、自爆テロ事件で100人以上の死傷者が出た。いずれもイスラム国が犯行声明を出している。
それだけではない。テロ攻撃と同時に、多数の民間人を拉致して奴隷にしてもいる。国連イラク支援団が19日に公表した報告書には、イラク国内だけで約3500人が奴隷として拘束されていると記されている。
アメーバ化するイスラム国
いまやイスラム国の魔の手は中東だけでなく、ヨーロッパからアフリカ、アジアにまで伸びている。今後、日本がテロ攻撃のターゲットにされてもおかしくない。官民を挙げて十分な警戒態勢を取る必要がある。
ただ不思議なのは、米国が主導する有志連合が万単位の空爆を続けても、イスラム国が「壊滅状態になった」「退散している」といった報道が入ってこないことだ。
米政府は公的な陸上軍の派遣を「限定的」としているが、実際には多数の特殊部隊がイスラム国と戦うために送り込まれている(「世界の警官から秘密警官へ、米国の恐ろしい急変ぶり」)。
国連のイラク事務所の職員が東京に来たときに内情を聞くと、「米特殊部隊はイスラム国をかなり追い込み、叩いている」ということだった。最新兵器を備えた特殊部隊がイスラム国の兵士に立ち向かえば、圧倒的に有利であることは容易に察しがつく。
だが、イスラム国は掃討されるどころか、アメーバのように他地域に拡散している。なぜなのか。
実はイスラム国は年間約20億ドル(約2360億円)と言われる潤沢な資金を維持している。過去数年、同国が金銭的に潤っている報道は頻出しており、犯罪集団を十分に存続させていくだけのバックボーンになっている。