2月1日付の全国紙は、ヒラリー・クリントン前国務長官が公務に私用メールを使っていたのがさらに見つかったと報じた。米国では機密漏洩という視点で以前から問題視されてきた。
日本においては公用メールの管理という示唆でもあるが、ここでは同時に公開されたメールで明らかになった外務省高官の尖閣諸島国有化についての認識の甘さを取り上げたい。
当時のカート・キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)が尖閣諸島を国有化する前の日本に、中国と事前協議を重ねる要請をしたことに対する佐々江賢一郎外務事務次官(当時)の回答が明らかになった。
外務省の中国認識
米国は中国の激怒を予測し、「佐々江と日本政府に北京と協議」することを奨めるが、新聞報道に見る佐々江次官の発言は「中国が(国有化の)必要性を理解し、いずれ受け入れると信じている」(「日本経済新聞」、他紙も同趣旨報道)というものである。何と楽観主義の次官であったことか。
国際情勢、中でも中国の歴史や言動に全然学んでいないのではないだろうか。日々が闘いである外交の場で活動する、日本を代表する次官の発言とはにわかに信じられないほど初心である。
今日の日中間の大きな係争に発展する震源になり、国益の棄損につながっていると思うがいかがであろうか。
かつて園田直外相は外務官僚を「理路整然たるバカ」と呼んでいたそうである(杉原誠四郎『外務省の罪を問う』)。頭の切れはいいが、自分が日本人であり、日本の国益を主張すべき立場にあることを忘れる外務官僚が多いからであろう。
どうしてこんな人が次官になり、駐米日本大使になるのだろうか。ここで思い出すのが、佐々江氏の数代前の次官であり、同じく駐米大使となった斎藤邦彦氏のことである。
アイリス・チャンの『ザ レイプ オブ ナンキン―第二次世界大戦の忘れられたホロコースト』がベストセラーになり、南京攻略戦に伴う「事件」でしかなかったものが「南京大虐殺」として米国をはじめ国際社会に大々的に流布することになる。
日本は何としてもそうした嘘、捏造が広がるのを止めなければならなかった。
そこで、チャンと斎藤大使によるテレビ討論が1998年2月実施された。しかし、結果的にはチャンの言説を補強することになってしまった。