産経新聞(9月29日)によれば、「日露関係が過去最悪レベルに落ち込む公算が大きい」という。

 メドベージェフ大統領が「近いうちに国後と択捉を視察する予定だ」という声明を発表した。ロシア(ソ連)の国家元首が北方領土を訪問した例はない。日本側からは当然のように反発が沸き起こった。

 9月29日、前原誠司外相はロシアのベールイ駐日大使を外務省に呼び、メドベージェフ大統領の北方領土訪問が現実になれば、「日ロ関係に重大な支障が生じることになる」と牽制した。

これ以上の「失点」は許されないメドベージェフ

 メドベージェフは中国訪問からの帰りにカムチャツカ半島のペトロパブロフスクカムチャツキーに寄り、国後と択捉に足を延ばす予定だったが、悪天候のために実現しなかった。そこで発したのが、「近いうちに必ず行く」「我が国の重要な地域である」という談話である。

 「近いうち」とはいつだろうか。11月に横浜で開催されるAPECサミットに参加する時に合わせるか、その前後か、ということになろう。

 しかし、日本が強く反発している時に訪問するのはあまりにも挑発的なので、訪問する確率は高くないと思われる。

 一方で、もしも行かないと日本の圧力に屈服したという印象をロシア国内に与えてしまう。中国人船長を釈放した日本のように、世論の批判を招く恐れがある。

 人気の高かったモスクワ市長を解任させたメドベージェフ大統領の決断は様々な勢力から歓迎されたが、一方でちょうどメドベージェフが中国訪問中だったことに引っかけて、まるで「中国製」のような決断だったという声もある(「質が悪い」という意味)。モスクワ市の汚職をはびこらせたのは、国の責任もあるのではないか、という意見である。メドベージェフはこれ以上、領土問題を巡って過ちを起こせない。対日政策の進め方には、冷静な判断が求められるはずである。

 前原外相の「(大統領の北方領土訪問によって)日ロ関係に支障が生じる」というコメントに対して、ロシアは議会(外務委員会)を立ち上げて、「日本がロシア大統領の動静を決めるのは、とんでもないことだ」と反発した。