本年1月1日から、欧州連合(EU)とモルドバ/ウクライナ間で自由貿易圏が始動した。既に両国とも貿易に占めるEUの割合はロシアを上回っており、さらにEUとの貿易関係が深まることが期待されている。
ウクライナでは、経済崩壊(IMF=国際通貨基金予測で2015年度のGDP=国内総生産成長率マイナス9%)により政権支持率は下がり続けているが、世論のEU加盟支持率は安定して推移しており、「侵略国」ロシアへの回帰は考えにくい(図1参照)。
一方、モルドバは、GDP成長率はマイナス1%(IMF予測)にとどまっているものの、昨年春に発覚した超弩級スキャンダルによりEU統合路線が揺らいでいる。
モルドバの首都キシナウ(キシニョフ)では、ウクライナの「マイダン」運動を彷彿させる抗議行動が続けられている。しかし、こちらは、親ロ勢力による親ロシア路線への政策変更を目指す運動であるという決定的な違いがある。
モルドバの抗議行動
旧ソ連から独立したモルドバは、農産品、特にワイン輸出で有名であるが、天然資源に乏しいうえに鉱工業が弱く、「欧州で最も貧しい国」と呼ばれてきた。
国外出稼ぎの送金額がGDPの4分の1に相当するほどである。このモルドバだが、ウクライナと共通点が多い。
旧ソ連で地理的に最西端に位置しEU加盟を目指す「ヨーロッパ」国というだけでなく、軍事的中立国であり、沿ドニエストル、ガガウスという分離傾向を示す地域を抱えている点である。
両国とも政権は不安定で政権交代が頻繁に生じている。また、オリガルヒ(新興財閥)が政治に幅を利かせてきた点も似ている。
モルドバでは、プラハトニューク氏のモルドバ民主党(PDM)とフィラート氏のモルドバ自由民主党(PLDM)という2大オリガルヒ政党が重要であり、2009年に両党が中心となった連合内閣により、モルドバのEU統合路線が確立されている。
従って、モルドバ国民にとって「EU統合路線」は「オリガルヒ政治」と分かち難く受容されている。