2010年夏に全米公開された「ザ・キッズ・アー・オールライト」は演技派女優のジュリアン・ムーアとアネット・ベニングがレズビアンのカップルを演じたことで話題を呼んだ。
カップルには、精子バンクを使ってもうけた2人の子どもがいる。長女が大学入学を前に探し出した、精子提供者である「血のつながった」父親は、人生を楽しむ魅力的なチョイ悪オヤジだった。この人物の登場により、平穏だった家族関係のバランスが崩れ、結婚生活のほころびがあらわになる・・・というストーリー。
共にアカデミー賞の主演女優候補として2度のノミネート経験を持つメジャースターが同性愛者を演じた話題性だけでなく、「“結婚とは何か”という根源的なテーマを問いかける映画」として批評家から絶賛された。同性婚という設定が、“普通のドラマ”として製作され、受け入れられたことが、まさに、現在の米国社会を映し出していると言っていいだろう。(文中敬称略)
同性婚を法的に認める州は少数派
現在、米国で同性愛者間の結婚を法的に認めているのは、コネチカット、アイオワ、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、バーモントの5州と首都のワシントンDCだ。この他、同棲する同性愛カップルに配偶者の権利を認めている州もある。一方で、「結婚は異性間に限る」とする憲法改正案または法案がある州は31州に上る。
カリフォルニア州の事情はちょっと複雑だ。同州では、2008年6月に同性愛結婚が合法化された。ところが半年後の11月、同性婚を禁じる州憲法改正案「住民投票事項8(Proposition 8)」が賛成52%で可決された。同性愛者が多い都市部と、保守的な農村部とではベクトルが全く違う方向に向いているため、整合性のとれない2つの法律が並存してしまっているのだ。都市部のリベラル派を中心に、「8を撤回せよ」を合言葉にした運動が巻き起こっている。
2010年夏、サンフランシスコ連邦地裁は「住民投票事項8は憲法が定める結婚の平等を保障する州の義務を妨げており、違憲」と判断。しかし、その後、この判決の差し止め請求が認められ、裁判は米連邦最高裁まで持ち越される見通し。米国全体の同性婚の在り方を左右する裁判として注目されている。
アーノルド・シュワルツェネッガー知事は「ゲイとレズビアンの家庭も、法律で守られる権利があると信じている」と発言している。