中国はこれまで経済発展に伴い、軍事力を強化してきた。中国の軍事力は非同盟の戦略に基づく自己完結型の戦力であり、核戦力と通常戦力の両方を保有し、既に世界有数の軍事力に強化されている。
現に昨秋の建国60周年記念の軍事パレード(以下、60周年観閲式)では近代化の進展ぶりを見せていた。
中国の軍事力は引き続き増強を続けているが、その実力はどれくらいか、軍事革命が進展する中で、その実態が問題として浮上してくる。
本稿は、先の中国国家戦略や現状の紹介に続くもので、まず中国の国防近代化の動向と課題を検討したうえで、核ミサイル戦力と通常戦力の両面から軍事力の実態に迫ってみたい。
中国が進める国防近代化の推進と課題
(1)国防近代化の必要性と目標
中国の軍事力は「富国強軍戦略」によって強化が続いている。その背景には中国の特異な安全保障観があり、アヘン戦争以来、列強から国土が蚕食されたという屈辱の近代史の体験から「力がなければやられる」という見方が根底にある。
また中国では、今日のような経済発展は国内外の安定した戦略環境が不可欠と見ており、それを保証するのが軍事力であるとの認識もある。そのために軍事力の役割が重視され、今世紀になっても国防近代化が優先して進められている。
中国の国防近代化の推進状況は、上で見たような国内事情だけでなく、中国を取り巻く国際情勢もまた軍事力の強化と近代化を促進させている。
中国が抱く脅威感を含めた情勢認識について、隔年で発行される『中国の国防2008年版』(国防白書、2009年1月発行の最新版)から見ておこう。
国防白書は中国が直面する脅威について「覇権主義・強権政治が存続しており、戦略資源の争奪や戦略要地を巡る局地衝突や非軍事的な争いは多発している」と米国の脅威を指摘し、「軍備競争は熾烈化し、軍事変革の進展がそれを促す」と警戒感を示している。