国内治安さえも米軍に委ねていた1951年の日米安全保障条約(旧安保条約)が改定され、日米同盟の根幹として意義づけられた新安保条約が締結されてから50年が経過した。
この間に発足した自衛隊では旧軍関係者は既に全員退官しており、その人々から直接の薫陶を受けた人々もほぼ退官してしまった。
現在の自衛隊には、戦後教育を受け、ややもすると、世界一般の軍人ではない官僚化された人たちで運営されているという、好ましくない傾向が見え隠れする。
さらに、警察予備隊として発足した自衛隊は、警察予備隊としてのDNAをしっかりと保持しつつ、また、50有余年にわたった政府の防衛・安全保障政策が反映された結果、軍隊的要素と警察的要素を併せ持つこととなった。
現在の自衛隊は、鵺(ぬえ)のような存在として国際的にも国内的にも認識されているところである。
そしてこの傾向は、「働く自衛隊」として部隊が海外に展開するにつれ、新たに具体的な制約が自衛隊に課せられ、そのたびに警察予備隊のDNAが掘り起こされていく感がある。
このような状況下、日米同盟の根幹として締結された新安保条約の、“同盟としての深化”を図るにはどのような問題・課題が存在するのかを考察することは、極めて喫緊かつ重要なことと考える。以下、そのような問題意識に従い筆をすすめることとする。
存在する自衛隊から働く自衛隊へ
平成4(1992)年9月17日、自衛隊が初めてカンボジアにおいて平和維持活動(PKO)を実施してから既に18年の時が流れようとしている。これがいわば「存在する自衛隊から働く自衛隊へ」の変化の始まりであった。
また平成16(2004)年3月、防衛庁(当時)・自衛隊および統合幕僚会議設立50周年を迎えた記念式典において石破茂防衛庁長官(当時)は、「ただ存在するだけの自衛隊の時代は終わった。いよいよ機能する自衛隊になった」という訓辞をされた。
これもまた、自衛隊によるイラクにおける公共施設の復旧・整備等ならびに米軍に対する輸送支援の開始という変化の始まりであった。
自衛隊のかかる変化の背景には、冷戦の終焉、伝統型脅威(State-actor)から非伝統型脅威(Non-state actor)へという脅威の変化が存在した。