北京の中国人民銀行(出所:Wikimedia Commons

 中国人民銀行の周小川・行長(総裁)は2009年にG20金融サミットを前に発表した論文「国際通貨体制改革に関する考察」で、IMFが準備資産の特別引出権(SDR)を改革すべきだと要求するとともに、人民元のSDR入りを目指す意向を表明した。

 現在の国際金融における基軸通貨はドルである。ドルは決済通貨としても貯蓄通貨としても絶対的な存在だ。ユーロの誕生でドルの地位が揺らぐのではないかと思われたが、ユーロはドルを補完する存在にしかなっていない。円も基軸通貨を目指したが失敗に終わった。ユーロと円はいずれも自由兌換のできるハードカレンシーだが、基軸通貨ではない。

 ユーロと円が基軸通貨になれない最大の原因は、ユーロ圏経済と日本経済の強さが不十分だからである。基軸通貨になる条件は市場で十分な信頼を得ることであり、それを支えるのはその国や地域の経済である。

 人民元は2016年10月からSDR構成通貨に採用されることが決まった。だが人民元が基軸通貨になれるかは、中国経済が十分に強くなれるかどうか、金融改革を断行できるかどうかにかかっている。