あなたが靴を買うたびに、靴を買えない子どもに靴を1足届けます。

 カリフォルニア発の靴メーカー「トムズ・シューズ(TOMS Shoes)」の靴は、軽くて、履きやすく、キュートなデザイン。色・柄も豊富でお手軽な普段履きとして、サーファーや芸能人に人気だ。でもトムズ・シューズの最大の売りは、デザインでも、お手頃の価格でもなく、「One for One = 1足売った分、1足寄付」をするという独自のビジネスモデルにある。

子どもたちが裸足で歩く姿を見て、靴メーカーを起業

トムズ・シューズの創業者であり、CGS=最高靴寄贈者でもあるブレイク・マイコスキーさん(写真中央)

 トムズ・シューズのCEO(最高経営責任者)にして自らを「CSG = Chief Shoe Giver(最高靴寄贈者)」と名乗る創業者のブレイク・マイコスキーさん(34歳)は、大学在学中の19歳の時に宅配集配のクリーニング店を始めたのを皮切りに、その後広告代理店など12年間で5つの会社を起こした若き起業家として注目されていた人物だ。

 マイコスキーさんにとってトムズ・シューズを創業する「種」となった出来事は、2002年に3大ネットワークテレビの1つCBSで放送されていた視聴者参加型の人気リアリティ番組「アメージングレース・シーズン2」に妹と共に出演したことだ。

 「アメージングレース」は、2人1組の参加者が番組から課される試練をクリアしながら世界中を旅して、最も早くゴールしたチームが100万ドルの賞金を獲得できるというもの。マイコスキーさんは残念ながら優勝は逃したものの3位に食い込み、何週間もテレビに登場したことで、「甘いマスクのイケメン起業家」として、ちょっとした有名人になった。

 その後、マイコスキーさんは個人旅行で2006年に番組で訪れたアルゼンチンを再訪。旅の終わりの1週間を、ブエノスアイレス郊外のロス・ピラトナスという小さな村でのボランティア活動に充てた。

 貧しい村には水道すら整備されておらず、子どもたちが毎日2~3マイルの道を歩いて水汲みに出掛けなければならない。しかも、ほとんどの子どもは靴を持っていない。傷ついた足からはバイ菌が入り、痛みをこらえながら水の入った重たい桶を運ぶ姿は痛々しかった。

 マイコスキーさんはその場面を見た瞬間、まるで天命を受けたかのように、「靴を売った分と同じだけの靴を寄付する会社を始めよう」と思いたったのだという。旅を終え米国に戻ると、それまで経営していた会社を売り払い、3人のインターンを雇い、ロサンゼルスの小さなアパートでトムズ・シューズを創業した。