1. 日本は大丈夫か
昨年9月、自民党から民主党へ政権交代が行われ、多くの国民は新しい政治の流れを作ってくれるのではないかと大いに期待した。
前政権ができなかったことに新たな試みとして取り組もうとしているが、反自民の政策にこだわり過ぎて、今日本がどのような状況にあるのか、日本をこれからどのような国にしようとしているのか、はっきり見えてこないし、その力強さも感じられない。
安全保障に関して言えば、日米安保体制や沖縄米軍基地の意味を十分理解もせずに、最低でも県外とした米軍普天間基地移設問題はまだ迷走中であり、今後の日米関係はどうなるのか。
それを見透かすかのように日本近海を航行する中国海軍、韓国軍を挑発する北朝鮮軍、北方領土において軍事演習を行ったロシア軍をどう見ればよいのか。
歴史の検証なしにただ謝って何が未来志向なんだ
今年は韓国併合100周年の節目に当たり、菅直人首相は8月10日に首相談話を行った。日韓関係の歴史的検証や今後に及ぼす影響について十分な検討もなされないままの謝罪の繰り返しで、何が未来志向なのか。
特に国家間の歴史は、その当時の時代的背景があり経緯があり、相互の立場や言い分ありで、内容はそう単純ではない。
一側面のみを取り上げて簡単に評価できるものではない。そのような微妙な国家間の歴史的事実を曖昧にして、一方的に首相の談話として謝罪することは、日韓相互に長く禍根を残すことになりはしないか。
歴史の真実に対し冷静に目を向け、慎重に評価したうえで事実に基づき自国の立場を毅然として主張することこそが、長い目で見ればお互いの立場を尊重することであり、信頼関係を生みだすのだと思う。
日本は、なぜそれができないのだろう。何の後ろめたさがあるのだろうか。日本ほど誠実に手順を踏んで対外政策に取り組んだ国はないのである。このような対応で、日本の安全は大丈夫だろうか。
真の日本の平和と繁栄とは何かを問い直すべき時
一方、安全保障に関する国民の意識は、以前から見ると随分と理解されてきたと思う。しかし、具体的に自分の住んでいる地域に基地を提供するかとなると、それは別問題であり、国の防衛施策に協力しようとしない。マスコミもそれを当然のごとく報道する。
初めての本格的政権交代、日米安保条約改定50周年、韓国併合100周年、こういう節目の今年こそ、「真の日本の平和と繁栄とは何か」について歴史的事実を踏まえて、しっかり検証してその教訓を導き出し、今後日本が目指すべき姿や進むべき方向を明らかにして広く国民に示す絶好の機会であると思う。
今年はそうしたチャンスでありながら、普天間基地移設問題の解決を地域の意思(民意)に預けるなどと国が責任逃れする有様で、議論が盛んになる気配はない。
これからの安全保障環境を見ると、東アジアは中国の軍事力増強と行動範囲の拡大、北朝鮮の核保有と金正日後の体制移行、ロシアでは対日戦勝記念日の制定と北方領土における軍事演習など新たな動きが見られ、極めて不安定な要素を含んだ地域であると言わざるを得ない。
そのような状況の中で、いかに日本および東アジアの平和と安全を確保するかが喫緊の課題である。