中国人民解放軍(PLA)の強化は毎年2ケタの伸びに示されるように、衰えを知らない。特に海軍力の強化は、目覚ましいものがある。
中国が海軍を増強しているのは尖閣諸島奪取のため
米国の「全米アジア研究部会」では、中国軍がグローバルな作戦を可能にする近代化を進める一方で、日本に対しては尖閣諸島の領有権主張のために海軍力を強化し続けるという分析もなされている*1。
我が国は、地政学的に見れば、南北に長く縦深性のない国で、国民の大多数が都市に集中し、自給自足が困難な四面海に囲まれた島国である。
従って、好むと好まざるにかかわらず、自由貿易を主体とする海洋依存国家にほかならない。
現在、海運による自由貿易によって繁栄を極めている我が国であるが、そういった
意味で経済活動を含めた国家の生存が海洋の自由利用にかかっていると言っても過
言ではない。
それは、原材料を輸入し高付加価値にして輸出する経済活動のスタイルも、大きく
変わり得る要素はここ当分考えられないからだ。
こういった状況下、日本の貿易の99.7%が船舶による海上輸送であることを思
えば、現在の海運政策が極めて不十分であることを、多くの国民に知ってもらうこ
とは意義があると考え、以下、我が国の海運から紹介したい。
1. 我が国の海運の現状
外航海運は、我が国の経済および国民生活を支える、まさにライフラインとして極めて重要である。しかし、この海上輸送の基盤を支える日本籍船および日本人船員の状況は惨憺たる状況にある。
まず、日本籍船については次ページ表1に示す通りである。1980年代、我が国の商船隊*2は約2500隻、総排水量1億1500万トンであり、日本国籍の商船は実に約1200隻であった。
それが昭和60(1985)年のプラザ合意後の急激な円高によるコスト競争力の喪失から年々数が減り、2008年における日本籍船は98隻しかなくなった。
これも一部の努力により98隻となっているが、2007年には実は92隻まで減少していた。現在でも約2600隻以上の商船が我が国の外航海運に従事しているものの、その1割にも満たないのである。
*1=米国の陸軍大学が民間の研究機関「全米アジア研究部会」と実施した研究セミナー2010年7月13日
*2=日本国商船隊の呼称は、国土交通省海事局も使用している