1.中国経済の不透明感が世界の金融・為替市場を揺るがした
この1カ月間、中国経済の先行きに対する不安感あるいは不透明感が懸念材料となり、世界の金融・為替市場が乱高下した。足許の中国経済は緩やかな減速傾向が続いており、当面失速のリスクは極めて小さい。
しかし、6月以降の上海株の暴落は世界の金融市場参加者に中国経済の失速リスクを想起させ、実態以上に不安感を煽った。これが市場乱高下の主な背景である。
加えて8月11日に実施された、為替レート決定の透明性を高めるための基準値算定方式の変更は2%程度と小幅の人民元安をもたらしたが、そのわずかな変動が市場参加者の不安感をさらに高めた。
その前後に公表された7月の主要経済指標が予想対比ダウンサイドに振れたことが決定打となり、株安、人民元レート切り下げを招き、それが世界の株式市場と為替市場を乱高下させた。
普通の先進国の経済指標が同じような変化を示しても世界の金融市場がこれほど大きく反応することはない。世界で最も注目されている中国経済だからこそこれほど大きなインパクトを持つのである。
それだけに中国政府は自国の政策運営に際しても他国の政府以上に世界経済、国際金融・為替市場に対する影響への配慮が必要である。
今後中国政府が金融自由化を進めていく過程で、今回のように世界の金融・為替市場に大きな変動をもたらす出来事が繰り返される可能性が高い。中国政府もこの点を重視し、市場との対話能力の向上、そのために必要な制度設計、政策運営手法、経済統計などの充実化、透明性の向上に取り組もうとしている。
そうした取り組みの一環として、国家統計局は9月9日、経済統計データの公表方式の変更について発表した。以下では、その内容と意義について考えてみたい。
2.足許の中国経済の安定を示すデータが公表された
本題に入る前に、上記の混乱を招いた中国経済の足許の状況について簡単にコメントしておきたい。
9月13日に8月の主要経済指標が公表された。市場の反応はいまひとつで、十分に不安感が払しょくされていないようだ。しかし、素直にこれを見れば、当面中国経済が減速はしても失速するリスクは極めて小さいことが分かる。