今回の安保法制の議論で良い点はというと、与野党の見解が国会答弁を経て以前よりも明らかになり、日本の防衛関係者が何をどう考えているかが国民に伝わるようになった点である。民間の学者もさまざまな立場から意見を述べ、議論に参加している。これは良い傾向であり、こうした議論が通常化することを望む。

 そのうえで、私は以下のような意見には疑問を呈したい。率直に言って、これらは的外れな意見であると言わざるをえない。

 まず「戦争の可能性が高まったり、自衛隊へのリスクが増える改正は許されない」という声がある。しかし、本来なされるべき議論は、一定のリスクを負ってでも日本の国益を達成するために日本が何をするべきなのか、という議論であろう。

 そもそも自衛隊が国防という任務を遂行できるように、国民は何十年にもわたって多額の税金を投資してきたのである。「自衛隊員のリスクが増えるから改正は不可」という主張は、そのことを否定する考えである。

 また、「違憲の可能性のある法改正は不可」という見解も聞かれるが、安全保障の見地からは間違いだと言わざるをえない。本来は、日本の安全を保障することがどんなときでも最優先であるべきなのだ。もしも法改正が必要であるのであれば、関連法のどの部分をどう変えるべきかを議論すべきである。法律を順守すること自体が最終的な目的となってはならない。法はあくまでも国防のための手段だからである。

 今回の国会審議で明らかになったことの1つに、世界の現実とはかけ離れた「反軍主義」が日本社会に根強く残っている点が挙げられる。反軍主義のために安全保障の学問が国内の教育システムに浸透しておらず、それが今回の議論の妨げとなっている。

 だが、日本が直面している軍事脅威に対応してゆくためには、国際政治や安全保障を国民にも国民の代表にも教育する必要がある。日本の防衛能力を高めることが日本国民の幸せのためには必要不可欠なものであることを忘れてはならない。

(本文中の意見は著者個人のものであり、必ずしもアメリカ政府、国防総省、もしくはアメリカ空軍戦争大学の政策を反映するものではありません)